花より外に知る人もなし/Crazy M ページ3
※幼女主
もろともに あはれと思へ 山桜
花より外に 知る人もなし
前大僧正行尊
「寂しくないの?」
こてん、と首を傾げる彼女は、さながら小動物。誰かに狩られやしないかと不安になるが、ここの森には自分にしか住んでいないことを思い出し密かに胸を撫で下ろす。よくこの森に遊びにくるAは、まだ十歳にも満たない。
にも関わらず、この森に夜だろうと御構い無しに遊びにくるのは彼女の両親が彼女に無関心で、どこかへ遊び歩き、ご飯も与えないから。数ヶ月前、お腹を空かせて道端で座り込んでいたところを理鶯が拾い、それ以来よくご飯を共にする仲となったのだ。事情を聞いた時は怒りに震えたが、力任せに動くのはよくない。幸い、親愛なるチームメイトに適任がいる。任せていればそのうちしょっぴかれるか何処かの湾に沈められるだろう。
普段温厚な理鶯がこれほど怒ったのは珍しい。だが、その痩せこけた体を初めて見た時、左馬刻も銃兎も流石に顔をしかめた。食べる幸せを知らない少女。理鶯は尽くす事を好む性分の為か、とりわけAに献身的になった。毎日のようにご飯を届けに行き、やがて彼女の方から理鶯の元にやってくるようになった。
森は蔓に覆われ、そこに隠れるように罠が仕掛けられてある。危険だからと最初は断っていたが、だんだんAが森にくるのは日常と化していた。
さて、今日も今日とて古びたスカートをはためかせ、ひょいひょいと身軽に山を登ってきたAだったが、タランチュラやらカミキリムシやらが入ったスープを2人で啜っていた時にふと冒頭の言葉を零した。唐突な質問に、理鶯は思わずきょとんとする。
「小官が寂しそうに見えるか?」
「うーん……見えるかどうかはわかんないけど、ここ、木さんと葉っぱさんばっかりだから寂しくないのかなって」
もう一度首をこてんと傾げるAを愛おしそうに眺める。まだ父娘と言うには理鶯は若いが、おかしいかと言われればおかしいわけではない。和やかな光景に興を添えるように、薪がぱちぱちと音を立てる。言葉は無くとも、その場は賑やかで楽しかった。
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市(プロフ) - ありあむ★さん» 何回か貼れてなくて焦りました(笑)コメントありがとうございます。頑張ります! (2019年2月16日 20時) (レス) id: 785252a094 (このIDを非表示/違反報告)
市(プロフ) - 水空色さん» 了解です。ちょっと二郎君の口調把握したいので遅くなるかもです…! (2019年1月28日 19時) (レス) id: 785252a094 (このIDを非表示/違反報告)
水空色(プロフ) - あの、リクで二郎とは犬猿の仲のヤンキー夢主が喧嘩に負けて襲われそうなのを二郎が助けるのいいですか? (2019年1月28日 18時) (レス) id: c0998fa5ff (このIDを非表示/違反報告)
市(プロフ) - あずま真太郎さん» いえいえ、こちらこそリクエストありがとうございました! (2019年1月21日 10時) (レス) id: 6e4265016c (このIDを非表示/違反報告)
あずま真太郎 - ありがとうございます(土下座)来世まで語り継ぎます(使命)こういう報われない(?)終わり大好きです。 (2019年1月21日 7時) (レス) id: 9ab5b26630 (このIDを非表示/違反報告)
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