無視する ページ9
太「Aー!」
太「ねえねえ、A。」
太「A?」
『……。』
あの日から、何となく私は太宰君を無視している。罪悪感からかもしれないし、そもそも理由なんてないのかもしれない。
ただ、あの日太宰君が助かったのが事実であるように私と太宰君が口を利いていないのもまた事実。
太「ねえ、私何かした……?」
いつもだったら「色々してるわ」と突っ込みを入れるけど……
……いつも?
何時から、私と最下位の太宰君が口を利くのがいつもになった?
寧ろこれが「いつも」で、太宰君に付きまとわれた日々が「非常時」だったんじゃないか。
だったら、私は悪いことなど何もしていないのではないか。じゃあなんで___
太「___A。」
不意に、太宰君に呼ばれた。「いつも」より低い、冷たい声。あ、拙いと思った。
遅かった。
太宰君より一回り小さい体は、太宰君によって簡単に押し倒された。
ぼんやりと広がる青空を見て、ああ、ここは旧校舎の屋上だったのかと気がついた。
太「なんで私を無視するんだい……?」
泣きそうな声で、怒ったような声で。鳶色の瞳は真っ暗だった。
ゆっくりと、王子様の接吻が近づく。
あ、このまま紅を重ねるのかな、なんて考えていた時、目に入ってしまった。
鎖骨からちらりと見える、赤黒い痣。
ドン、と太宰君を押した。
ぐらりと影が揺れる。
『っ、もう!二度と近づかないでよ!』
太宰君は、最下位なんだから。
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