哭く少女【nikolai】 ページ23
グスグスと哭く少女。透明な宝石が白い頬を伝う。眼は赤く、傍では露西亜帽を被った男がおろおろとしていた。
「な、哭きやんでください……ね?」
「うぇぇん……だ、だってドス君……ゴーゴリ君が来ないんだもん…… 」
「ですから、彼は仕事があって…… 」
必死に弁解するが、少女は哭き続ける。普段は「魔人」と称される男ドストエフスキーでさえ、その様子に困り果てていた。その時、部屋に突然道化のような男が入ってきた。彼こそが、少女の待ち侘びていた「ゴーゴリ君」である。ゴーゴリは哭く少女を見て、こう云い放った。
「いい加減“哭き真似”やめたら?」
「……哭き、真似?」
ドストエフスキーが一瞬ぽかんとする。少女、Aはふふふふと笑いを漏らした。
「さーすがゴーゴリ君!見破っちゃったかあ」
「私が何回それに引っかかったと思ってるの!見破れるようにもなるよ!」
もう、と頬を膨らますゴーゴリを見て、Aは愉快そうに笑う。そして、何かを教えるように人差し指をピンと立てて話し始めた。
「ほら、私って余命数日でしょ?その事を思うと哭く演技が出来るんだよねえ」
当事者は嬉しそうに云うが、ドストエフスキーもゴーゴリもほんの少し哀しそうな表情になった。
そもそも彼女は、「死の家の鼠」の作戦参謀だった。とは云っても、頭目が頭目なので殆ど仕事などしなかったが。それでも、彼女の明るさは周りを少なからず幸せにした。「死の家の鼠」にとって、なくてはならない人物だったのだ。そんな彼女が発したのは、治療法のない奇病。その余命は、あと数日に迫っていた。しかし本人はそれを嘆く事なく、楽しそうに笑う。
「ゴーゴリ君、私の哭き真似を見破れるのは今のところ君だけだ」
「うん、だから?」
「私がさ、もし本当に哭いてたら、慰めてよね」
道化師は勿論だ、と笑った。
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月瀬ゆうめ(プロフ) - 市さん» わぁぁぁ・・・褒めて頂けて嬉しいです!検討有難う御座います!出来れば・・・ですから無理なさらないで下さいね 市さんの他の作品ものぞかせて頂きます♪ (2019年1月20日 10時) (レス) id: 07bb2550e4 (このIDを非表示/違反報告)
市(プロフ) - かなでさん» ありがとうございます!かなでさんに応援していただいたおかげで完結することができました。本当にありがとうございました!! (2019年1月19日 21時) (レス) id: 6e4265016c (このIDを非表示/違反報告)
市(プロフ) - 月瀬ゆうめさん» ありがとうございます。ゆうめさんは甘いのとかお上手なので羨ましいです……。了解しました!検討させていただきます。 (2019年1月19日 21時) (レス) id: 6e4265016c (このIDを非表示/違反報告)
かなで(プロフ) - 完結おめでとうございます!!一話一話を読み終わる度に何とも言えない気持ちになり、言葉にすると『好きだわこれ』しか出ないくらいにもう…もう…好きです!!(結局これしか言えない)二度目になりますが完結おめでとうございました!お疲れ様でした! (2019年1月19日 21時) (レス) id: 5c0695dae3 (このIDを非表示/違反報告)
月瀬ゆうめ(プロフ) - ヒヤリとしたりほんわかしたり・・・読み進める中にどんどんハマりました(笑)中也の盲愛とかは最後の一行に話の全貌が見えてドキッと冷や汗が流れた気がしました・・・面白かったです!続編作って頂けたら見に行きます!・・・無理ではなければ続編作ってほしいです! (2019年1月19日 21時) (レス) id: 07bb2550e4 (このIDを非表示/違反報告)
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