ジンカクあんさんぶる。【潮田渚】

Mezzo Piano ＊ ３ ページ40

全ての責任が私に押し付けられた。



質問だとか、してくる人がいるかと思ってたけど、



誰もしてこなかった。



同時にこの場の居辛さがあると思ってた。



…結果、そうでもなかった。



思わず、首を傾げるほどに。



「Aっ」



あっという間に放課後。



鞄に荷物を積めていると、名前を呼ばれた。



「カエデ…」



朝、気まずそうにしていたカエデは、私の前に立ち、



「ごめんなさい」



勢いよく頭を下げた。



「Aがそんなことするはずないって思ってた。けど…A、渚のことで追い詰められてるみたいだし、」



「いいよ」



言い訳といえば言い訳だけど、



「友達がこうやって頭下げて、真剣に謝ってくれてるんだもの。許す！…なんて」



ちょっとふざけたようにカエデに言うと、



彼女は涙を溜めた瞳で私を見つめた。



「ありがとう、ごめんね」



「だからいいってば」



でも、と口ごもるカエデ。



「A、帰るよ」



カエデなど気にしないというように、



渚が私達の間に割り込んだ。



「…ちょっと、空気読めないの」



「すべきことをして何が悪いの」



君の彼氏なんだから。



「……リア充め」



顔色変えず彼氏と名乗った渚に、



静かに爆発しろと呟いたカエデ。



「もう、さっさと行くよ」



「えっあっちょっと、」



「ばいばいA、また明日〜」



痺れを切らした渚は私の手首を引っ張った。



慌てて鞄の紐を掴む。



友達に挨拶をと振り返るが、闇を纏う彼女と笑顔に、



…何も、言えなくなった。



山を下って行く時も、彼は手首を離さない。



「…渚、手」



「うん」



「離してくれない…デスカ」



「うん」



…こいつ、聞いてないな。



「ねぇ、A」



「っ、はい」



急に話しかけられて声が裏返る。



「今日の朝以来、誰かに何か言われた？」



「どうしてそんなこと…」



「いいから答えて」



低音で問われる。



私の前を行く渚の顔は見えない。



「…誰にも、何も、言われなかったよ」



不思議なぐらいに。



「そっか」



顔は見えない。



「……なぎ、」



鞄から振動が伝わってきた。



「渚ごめん、携帯」



断りを入れると歩を止め、手も離してくれた。



…なんだ、離してくれるの。



鞄から携帯を取り出すと、メール一件との表示。



迷惑メールか何かかな。



「…！」



「…どうしたの」



「……ううん、」



なんでもない。

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