32--そうか ページ32
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家族を殺された。
両親も弟も、俺を助ける為に犠牲になった姉さんも。
人の命が奪われるのは一瞬だ。
姉さんに言われた通りに静かにしていれば、戸棚の外から聞こえた酷く痛々しい姉さんの声に思わず耳を塞いだ。幼すぎた俺には、鬼という存在も、家族が殺されるという事実も。十分すぎる程に俺を苦しめた。
その後、鱗滝左近次と名乗る後の師匠に出会い、俺と同じく天涯孤独の身となった錆兎にも出会った。
___俺と錆兎は、常に共にあった。
俺よりも剣技の才があり、確実に強かった錆兎。仲間思いで、酷く心の優しい少年だった。最終戦別のあの日も…………………。
怪我をした俺を他の受験者に預け、悲鳴の聞こえた方へと真っ先に走った錆兎の背中が俺の頭の中でずっと焼き付いている。
最終戦別後、怪我で倒れた俺が目を覚ましてから真っ先に錆兎の事を聞いたが、なんて言われたのかは、あまりよく覚えていない。いや、
錆兎の様な奴が生きるべきだと、
アイツの代わりに俺が死ねばよかったと、
俺がもっと強ければ…………と
情けなく泣き叫んだのを覚えている。帰ってくるはずもないアイツへの後悔しか募らなかった。
ずっと………俺が生きていてもいいのかと思って今まで過ごしてきた。
俺の代わりに錆兎が生きていれば、今よりも多くの者の命が救われていたのでは無いか。
そんな考えが、いつまで経っても消えなかった。
けれど、
「俺は、生きていいのか」
『人を好き』だと言い
鬼に情けをかける程の優しい心をもった彼女へ
つい口からほろりと言葉が零れた。
しまった。つい返事をするかのように自然と出てしまった。俺は一体この少女に何を求めて、
「_____生きてちゃダメな人なんて。いないですよ」
ストンと、胸の辺りにその言葉が落ちて出かけた否定の言葉を引っこめる。
「どんなに辛くて悲しくて辞めたい時があっても」
錆兎を守れなかった。共に試験に受かろうと、必ず鬼殺隊になろうと誓った俺の大切な人を。
何度も俺が死ねばよかったと後悔した。
でも、お前はそれを
「___それも全部含めて人生なんですよ。きっと」
大切な友人を失ったこの苦しみも。最愛の姉を失った悲しみも。痛みも悔しさも
全てを背負って生きる事を許すのか。
………………………そうか。
俺は、生きていてもいいのか。
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メア(プロフ) - やあさん» アニメ以降の無限列車編のみネタバレとなります! (2019年12月16日 8時) (レス) id: 80100b30c6 (このIDを非表示/違反報告)
メア(プロフ) - 紅葉さん» お返事遅くなりすみません!うおお好きが沢山…めっちゃありがとうございます!!続編から先もよろしくお願いします!! (2019年12月16日 8時) (レス) id: 80100b30c6 (このIDを非表示/違反報告)
やあ(プロフ) - この作品、ネタバレありますか…?? (2019年12月16日 2時) (レス) id: 3fd8182389 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - むっちゃ好きです大好きですこんな素晴らしい作品をありがとうございますそれでは続編行ってきます!(ノンブレス) (2019年11月24日 9時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
メア(プロフ) - カオリさん» そうなんですか…!すみません、ご指摘ありがとうございます!頸動脈切ったら即死に変えさせていただきます! (2019年11月11日 20時) (レス) id: 80100b30c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:メア | 作成日時:2019年10月5日 22時