◇君の嫌いな理由◆ (ページ8)

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「はい！」

「そか」

「受け取ってくれますかね…」

「大丈夫やって」

「ちょっと、不安です…」

「受け取られへんかったら
俺がぶん殴ったるから」

「…頼もしいです」

満足そうににこっと微笑む後輩ちゃんを
変わらない優しい笑顔で見てるすばる。

都合がいいかな。
亮君、助けてって。

２回目のSOSを心の中で出す。

「A！」

タイミングが良すぎる。

亮君の焦った声に振り返る。
すばるがムッと顔を顰めたのが見えて
後輩ちゃんはやっと私の存在を認識した。

それも一瞬のことだった。

「…も、どこ行ったか思うたやんけ」

「ごめん」

「ん、無事やったからええよ？」

「亮君、ごめんね」

「ええて、どしたん？」

亮君はすばる達に気付いてないみたいで
私を心配そうに見つめる。

一言言ったんだけど
やっぱり聞こえてなかったんだ。

「あ！これね、お礼」

手に持ってたドデカミンを渡すと
きょとんとした亮君がふわぁと笑った。

目を少し擦ってありがとうって
はにかみながら受け取ってくれた。

「もうそろそろ時間やな」

「うん？」

「帰ろっか」

「あ、はい」

「ん、送る」

「え、大丈夫ですよ」

「ええのええの」

そう言って行きと同じように
私の手を握った亮君。

もしかして。

「Aっ」

すばるのちょっと怖い声が聞こえて
振り返るとじっと繋がった手を見てる。

なに。その顔。

怒ってるような顔なのに
悲しそうな顔を覗かせてる。

「…何もない。気ぃつけて」

「…うん、ありがとう」

くいっと軽く亮君に引っ張られて
前を向いて歩き出す。

何だったんだろう。

呼び止めた理由は何？
何もないならどうして呼んだの？
その顔の理由は？
すばるが考えてることは何？

分からないことが多すぎて
こんがらがる。

「A？」

「はい？」

「…何考えてんの？」

「・・・」

ふわっと亮君が笑った。
もしかして。

「気付いてますか？」

「…んー？何が？」

亮君、気付いてるよね。
私がすばるのことを好きなこと。

だってね、さっきすばるの横を通るとき
さり気なく回ってすばるを隠してくれたよね。

いつから気付いてたのなんて。

「…何でもないです」

「気づきたくなかったけどな」

そんな顔で言われたら聞けるわけないよ。

ぎゅっと亮君から握られた手を
少しだけ強めに握り返す。

「Aってほんま…」

「え？」

「…何もないで」

そんな優しい顔で見られたら。
気づかないでって言えるわけない。