◇君の嫌いな理由◆ (ページ11)

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「A！」

昨日のすばるとのことを思い出しながら
学校へと歩くいつもの通学路。

ふっと遠くの方から私の名前を呼ぶ声が聞こえて
振り向くと間違いも無く、亮君だった。

「亮君、おはよう」

「ん、おはようさん」

男の子特有なのかな。

少しくしゃっとなってる髪。

「…ん？何？なんか付いとる？」

「付いてるっていうか…」

ぴょんっと跳ねてる髪の辺りを
自分の髪で示すと
亮君は勢いよくそこを押さえた。

あんまり鏡見ないのかな。

亮君なら、見てそうなんだけど。

「ほんま最悪！今日寝坊してん！」

「そうなんですか？」

「ん！」

こんなの見たら誰だって
亮君を怖いって思わないのに。

ちらりと遠くで亮君を見てる
名前も知らない同校の人を見て思う。

「学校着いたら、直しましょうか？」

「え？ほんまに？」

「はい、ウォーター持ってますから」

「A！ありがと！」

にこにこ笑う亮君が可愛くて
思わず視線を逸らしてしまった。

子犬みたいな笑顔だもん。

「ん？Aどしたん？」

「あ、いえ、何でもない…です」

ふーんって興味無さげにそう言った亮君が
あっと小さく呟いた。

あぁ、アレね。
さっきから気付いてたよ、実は。

前方に見えるダルそうな背中と
大きな背中の奴とミディアムヘアの女の子。

言い換えれば、すばると大倉と後輩ちゃんってこと。

「Aさ、あいつらとどんな関係なん？」

「どういう…」

思わず顔が曇った私を見て
亮君が慌てて嫌ならええよ！って。

嫌なわけじゃないんだけど。

どういう関係かと問われたら
上手い返しがないだけ。

「女の子はよく知らないんですけど
あの大きい人はクラスメイトです」

「…小さいやつは？」

「・・・」

すばるは…何なんだろう。

幼馴染？
同級生？
友達？
それともクラスメイト？

でも、全部しっくりこない。

「…家が、近いだけです」

「…そうなんや」

結局出たのはそれ。

あぁ、すばると私の関係は一体何なんだろう。
何ならしっくりくるんだろう。

いつからだっけ。
すばるの態度が変わったのは。

睨んだり舌打ちされたり嫌われてる感じはするのに
時々ふっと仲良かった頃のようになる。

時々気付いたら手を差し出してくれてる。

「変なこと聞いてごめんな？」

「いえ、全然」

すばるの本意はどこにあるの？
どうして私を避けてるの？
どうして私を助けるの？

すばるの本当の気持ちが
見えないし分からないから
知りたいのに怖くて聞けない。