【ツイステ】監督生の体液は、魔力を増強させる性質があるらしい。【短編集】 (ページ32)

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｢ち…ちょっと待ってください…寝る間も惜しんで私達のケーキを作ってたんですか…!?先輩、忙しいはずなのに……｣

先輩があれほど疲れた顔をしているのは、私のせいだったのか……！

罪悪感に苛まれ、血の気が引いていく感じがした。申し訳ない思いでいっぱいになっていると、トレイ先輩が困ったように眉を下げる。

｢ははっ、そんな顔しないでくれ。
…確かに、昨日は寝ずにケーキを作ってたが、俺が好きでやったことだからな。｣

…歓迎会でケーキを出そうと提案したのは俺なんだ。そしたら、リドルが俺の負担を考えて市販のケーキを用意しようと…けど俺は、A達にはどうしても自分が作ったケーキを出したいと思っていたんだ、だから。

｢俺は、こうして直接美味しいって言って貰えただけで嬉しいし、疲れなんて吹き飛ぶんだよ。｣

ぽすん、と頭の上に手を置かれ、まるで幼子を宥めるように撫でられる。

｢…せっかくだから、このまま少しお茶していかないか？
Aさえ良ければ、今試作してるケーキの味見してもらいたいんだが…いいよな？｣

｢…そ、そんな…！私を構うよりも先輩は休んだ方が……｣

｢Aと話すだけでも十分休んだことになるさ。それに、試作したケーキの感想も聞けるし、仕事が1つ片付いて俺は大助かりなんだけどな。｣

｢ぐっ……分かり、ました……｣

…結局。

私は、言われるがままトレイ先輩の部屋にお邪魔することになった。紅茶も頂いたし、味見とはいえトレイ先輩の美味しいケーキまで頂いた。
ふと、本来の目的を思い出し、先輩の話を聞いて少しでも疲れを和らげてあげようと思ったが、気付けば私ばかりベラベラと喋っていた。仮入寮することになった経緯を話しているうちに、愚痴まで聞いてもらい…… 挙句の果てにはテーブルに突っ伏してうたた寝をしてしまった。なんだか暖かいと思ったら、トレイ先輩の上着が肩にかけてあって…

私は情けなさと恥ずかしさの二つの意味で赤面した。
そして心の中の自分を思いっきりぶん殴った。

…私がもてなされてどうする！！

恐るべしトレイ先輩のお兄ちゃん力…
こうやって皆無意識に甘えてしまうのか……

｢こ……こうなったら…
私が先輩の疲れを徹底的に癒してやる……！｣

私はテーブルの下で拳を握り、1人静かに意気込んだ。

……こうして、ケイト先輩の思いつきで無理やりトレイ先輩の元に連れてこられたはずの私は、焚き付けられたように自ら先輩の元に足を運ぶようになったのである。