��_酔っ払い ページ4
――「ヘーゼルさんはいつも楽しそうねえ」
「はえ？」
普段は飲まない酒に勢いで口をつけた反動か、ヘーゼルの顔は程よく赤く染まっており、いつもにも増してヘラヘラと笑っていた。
仲の良い酒場のおばさんに誘われたから、とヘーゼルはサーカスの帰りに少しばかり立ち寄ったのが良くなかった。
周りのもはや出来上がっていた男たちに煽られ、仕方なしと慣れない酒を飲んでいたら、ヘーゼル自身気付かぬうちに酔っていたらしい。
…さて、時間軸は戻ってヘーゼルは酒場の女にそう言われて首を傾げた。
時刻はそろそろ酒場が賑わってくる時間帯、ざわざわと騒がしくなってきていて、ふと時間が空いたらしい店員の女はヘーゼルに声をかけたらしい。
ヘーゼルは首を傾げたままぱちりと瞬きをして、考え込んでしまった。
店員の女はその態度に逆に不思議に思ってしまい、しかし声をかける暇もなく客からの声が掛かり、急いで行ってしまった。
ヘーゼルは一人、テーブルに突っ伏し、ぽそりと呟いた。
「……楽しい、以外の感情って……逆になんすか」
その呟きは、酒場の喧騒に掻き消された。
・
ヘーゼルは勘定を支払ってから酒場を出た。ふわりと、多少冷たい夜風に当たったことで少しばかり頭と酔いが冷めたらしい。
ぐっと未だに騒がしい酒場を背に伸びをして、ほっと息をついた。にゃあ、と小さく聞こえた愛しの動物の声にキョロキョロとあたりを見回し、ふと足元を見た。
足元には赤茶に似た色の毛並みの猫がいて、ヘーゼルを見上げてまたにゃあ、と鳴いた。ヘーゼルは嬉しそうに猫を抱き上げて頬に擦り寄せた。
「君珍しい色してますっすねー可愛いっすー……癒されますっす……」
何度も頬擦りをしていると流石に嫌になったのか、猫から嫌そうな声が発せられ、慌てて顔を遠ざけた。腕の中で抱いて、優しく背を撫でる。ゆるりと頬が緩んだ。
赤茶色には、少しばかり思うところがある。ヘーゼルは猫を撫でるのを一度やめ、片方の手で自分の耳に触れた。十字架のピアス、忌々しい家族の記憶。顔も覚えていない、生き別れた可愛い弟の記憶。
少し考え込んでしまい、ふるふると頭を振った。家族のことはもう知らない、弟を探す。自分の人生も謳歌する、それが今の目的。何も難しいことは考えなくていい。
………ああやっぱり、今日は少し酔ってしまったらしい。家に帰って、もう寝よう。
腕の中の猫を放して、家へと歩き出した。
続く
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ゆり(プロフ) - キョウさん» ライナーとバサマのやり取り面白く笑ってしまいました。 自分のキャラクター達も登場させて下さい。 (2018年1月11日 8時) (
レス) id: 5d18b714a6 (このIDを非表示/違反報告)
キョウ(プロフ) - ゆりさん» ありがとうございます！光栄です…！頑張ります！ (2018年1月11日 5時) (レス) id: 9a9e1e4fdf (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - 面白いです！！頑張ってください。 (2018年1月10日 22時) (レス) id: 5d18b714a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キョウ | 作成日時：2018年1月8日 13時
