ラズベリームースと、それから。 (ページ31)

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宮近side

「いらっしゃいませー」

Aちゃんと別れ気付けば入っていたのは

あの日、Aちゃんと出会ったカフェだった。

「ご注文は？」

店員さんの言葉に慌ててメニューを見る

あの日そういえば、

「あ、えと…ミルクティーとラズベリームースで」

「かしこまりました！」

すぐに運ばれてきて、一口食べる

Aちゃんと出会った日、思わず声をかけた直後

元彼が頼んだであろう
このムースを勢いよく食べていたなと思い出す

思えば、あの威勢の良さを見て

＂もっとこの子のこと知りたいな＂って思ったんだ

今日、多分というか確実に、
Aちゃんから歩み寄ってくれたのに

＂自惚れかも＂とか、もし俺だけ好きだったらとか

「結局は逃げちゃったんだよなあ」

＂気持ち伝えるのは素直でよくない？＂

海人の言葉を思い出す

素直になる以前に自分の気持ちから逃げた

Aちゃんは逃げなかったのに

「…かっこ悪」

呟いた時にはもう席を立っていて

気付けば店を出て走り出していた