ラズベリームースと、それから。 (ページ5)

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宮近side

「あの…教えてくださってありがとうございました」

店を出るなり、彼女が深々と頭を下げる

「いやいや、全然気にしないでください」

裏道で人通りも少ないからそのまま2人で歩き出す

「…あの、」

少し悩んだような顔をした彼女が俺の顔を覗き込む

「宮近…海斗さん、ですよね」

「…あ、知ってる感じですか」

「さっき彼氏に振られた理由のひとつが
趣味を優先するから、で。その趣味が
トラジャのライブとかで…なんかすいません」

気まずそうにそう言ってまた俯く

「そうだったんですね、
応援ありがとうございます…でいいのかな」

「あ、でも！書いたりとか喋ったりしないし、
もうあそこには行かないので！別れた場所とか
行きたくないし、なのでお構いなく！！」

早口で焦ったように言う彼女の姿に

「そんなに焦んないで(笑)」

なぜか安心感を感じ笑いが込み上げる

「すいません…こんな隣歩くのもまずいですよね」

「いやいや、そういえば名前は？」

「A A、です。同じ歳です」

「そうなんだ！改めて宮近です」

「…存じ上げてます、めちゃくちゃ」

「ありがとう(笑)」

そう言って笑っていると、表通りが近づいてくる

さすがに表は人が多いから別れなきゃいけないなと
思うと同時に、Aちゃんとの何気ない会話を
楽しんでいた自分がいることに気付いた