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「…れっどらむ?」
話を聞くと、どうやらレッドラムという薬が、鳳仙学園で出回っているらしい。その件がなかなか厄介らしく、未だに解決できないとのこと。
「葵ちゃんには、…関係ない世界の話だから、」
「…」
「だいじょぶだって、心配すんなぁ。…な?」
…ほら、やっぱり。少し眉が下がる、困ったような優しい表情。本当はきっと、大丈夫なんかじゃないんだ。だけど、私が小田島くんの世界に入らないように、彼なりに気を使っているんだろう。
小田島くんの優しさ。理解できるのに、まるで違う世界のひとと言われている気がして、悲しかった。
「…小田島くん」
「ん、?」
「…嘘つき」
「およ?」
「大丈夫、なんかじゃないんでしょ?小田島くんがこんな分かりやすく私に見透かされるなんて、よっぽど、なんでしょ…?」
いつだって冷静で策士で。斜に構えてる、そんな彼にしては、あまりにも分かりやすいものだった。心配になって顔を除くと、その瞳と目が合う。
すると、諦めたように笑った。
「適わねーよ、葵ちゃんには」
「…無理しないで」
「うん…ばれちゃあ仕方ない」
「小田島くん、」
「ちょっと、甘えさせて…」
そう言って、力強く回された両腕。強く引かれ、抱きしめられる。今までみたいに優しく包むようなものではなくて、少し強引で、なにかに縋るような、そんな抱きしめ方だった。
小田島くんが大変なときに、私は何もしてあげられない。彼の小さな嘘に気付いてあげることしか、私にはできない。住む世界が違うんだ、やっぱり。その世界に私が踏み込むことはできない。もちろん、彼も望まない。
…でも、それでも。世界が違うからって、小田島くんを手放せない。捕まえてもいないのに、そんなことを思ってしまった。
「またしばらく、会えねえかもしんねーけど」
「…」
「片付いたら、絶対帰ってくっから」
「うん、」
「そんとき、俺の気持ち、聞いてくんねえ…?」
弱気な、彼らしくない台詞。また困ったように笑う。それがなんだか、不安で。思わず力いっぱい、抱きしめてしまった。
「…うん、じゃあ」
「…何?」
「そのときは、私の気持ちも聞いてほしい…」
「…はっ。こりゃ、早く片付けなきゃなぁ?」
あ、少し戻ったかな。青いレンズの奥が、少し燃えた。葵ちゃんありがと〜、と囁く彼に、迷いはないように見えた。
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aoi(プロフ) - みさももさん» そうなのですね!!うれしいです*甘ったるい中に、少しどろっとしたものを持っているような、そんな感じで描いていこうと思ってます!更新がんばります* (2019年11月20日 16時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
みさもも(プロフ) - 私の中の小田島くんのイメージにぴったりなんです!あまあまだけどやる時はやる男と言うか、、、だから大好きです!これからも愛読させていただきます! (2019年11月19日 23時) (レス) id: 9abd401940 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - みさももさん» こんばんは、コメントありがとうございます*すっごくうれしいです!私の描く小田島くんは、少し優しすぎると言いますか、女々しいかな、なんて思いながら描いていたので、励みになりました。これからよろしくお願いします! (2019年11月18日 21時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
みさもも(プロフ) - 初めてコメントします!私的に小田島くん小説で一番大好きです!更新ファイトです! (2019年11月18日 21時) (レス) id: 9abd401940 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - ぱんださん» コメントありがとうございます。鳳仙の絆すばらしいですよね…!更新お待ちいただけるとうれしいです* (2019年11月18日 17時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aoi | 作成日時:2019年11月12日 22時