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何処までも繋がる。 前編 ページ20

明るい日差しが差し込む縁側で
ゆっくりとお茶と菓子を嗜むこの時間、
この世界に来てから随分と経つが
この日課だけは今まで一日たりとも欠かした事はない。

「ねぇ、おじいちゃん!
聞いてっ!私っ!
今日ね、今日ねっ、」

髪がくしゃくしゃになり
泥だらけになったその子は

幼い子供特有の高い声で
私だけの空間にずかずかと入ってくるなり
怒涛の勢いで喋り始めた。

「うんうん。
まずは、落ち着いて…?
座りなさい。

ほら、これでも食べて。」

「わぁ!いいの?
これ、もしかして…
琴音おばあちゃんの手作り?やったー!」

私の妻お手製のクッキーを渡すと目を輝かせて、
それを受け取る愛おしい私の孫。

昔からお菓子好きの彼女の事だ、
殆ど、これを目当てで此処に来ているとそう私はふんでいる。

だが、まぁ、来てくれているだけ、
祖父としては嬉しいのだが…

「ありがとう。おじいちゃん!」

こうしてちゃんとお礼を言う辺り
本当に良く出来た子だ。

私の膝の上にどさりと
当たり前の様に、
遠慮なく座る、彼女。

いや、とても出来た子なんだよ、
普段は…

「美味しい!!」

モグモグと夢中に食べる彼女の
その黒髪を優しく撫でて埃や葉っぱをとる。

優しく指でとかしてあげながら、
私は彼女に聞く。

「それで、一体、
そんなに慌ててどうしたんだい?」

「あっ、そうだっ!」

何かを言いに来た事を忘れてお菓子に夢中になるとは、
まぁ、とても彼女らしいのだが…

「今日、新と翔でね、
裏山の方で一緒に忍者ごっこしてたの!」

「へぇ、そうなんだ?」

「うんうん、それでね。
私達、途中で瓜坊に会ったの!

ふわふわで、凄く可愛かったんだけど…」

少しずつ声が小さくなる彼女。

…うん、なんとなくわかった。

「瓜坊のお母さんが
迎えに来たんだよね。」

私の言葉に
首を縦にブンブンと振って、
彼女は両手を大きく広げる。

「うんうん、そうなの。

こーんなに、大きいの!
すごく怖くて、
私達三人で逃げたんだ!」

「大変だったんだねぇ…」

ふふふ、心配だよ?

でも、そんな事で
へこたれる子じゃないというのは、
ずっと、はるか昔から私は知っている。

「うん。怖かったぁ〜。
それでね、私…二人共と途中で逸れちゃって
しかも転んじゃったの!

ほら、ここ!
ヘヘ、もう、痛くないけど!」

そう言うと、彼女の膝には、
一枚の絆創膏が丁寧に貼られていた。

何処までも繋がる。 後編→←弟の神様は…



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おぼろん(プロフ) - こんそめさん» こんそめさん、こちらこそ貴重なお時間をありがとうございます!数時間もかけてなんて、私だったら途中でギブアップしてしまうと思います…勿論ファンアート大歓迎です!しかし食人さんにも言った通り、あまり無理はなさらずご自分のペースでお描きくださいね。 (2022年4月10日 4時) (レス) id: f5adc93abe (このIDを非表示/違反報告)
食人(プロフ) - おぼろんさん» メッセージ送信ってやつですかね…ありがとうございます!優しい… (2022年3月25日 10時) (レス) @page18 id: e21618e8ed (このIDを非表示/違反報告)
おぼろん(プロフ) - 食人さん» 私のCOMMUの方に送っていただければ、後から「作者から皆様へ」に追加更新させていただきます。ご自分のペースで構いませんので、あまり無理はなさらず気軽に描いてくださいね。 (2022年3月25日 9時) (レス) id: b140951648 (このIDを非表示/違反報告)
食人(プロフ) - おぼろんさん» 重ね重ねすみません😭完成したらどこに送ればいいですかね? (2022年3月25日 9時) (レス) @page19 id: e21618e8ed (このIDを非表示/違反報告)
おぼろん(プロフ) - 食人さん» もちろん大丈夫です!むしろファンアートを描いていただける事なんて滅多にないので作者としてすごく感激してます! (2022年3月25日 8時) (レス) id: b140951648 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おぼろん | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2020年10月15日 22時

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