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不況でバイト探しはきつい? 後編 ページ8

私は彼の提案に首を横にふった。

「いや
家はあるんですけど
稼ぎどころがないんです…」

「もしかして、
わしが無理を言ってしまって、」

「あー、そんなんじゃないですよ。
バイトの方は私の雇用契約自体が
不当なやつだったんでいけないんですし…

何言って切られても文句言えませんから。」

「Aちゃん…若いのに苦労してるんだねぇ…」

「まぁ、此処らの人並み以上には
してると思います?」

「正直なんじゃねぇ…」

「正直というよりかは、真実ですから。」

「…そうかぁ。ふむ…」

顎に手を置いて、店主さんは
何やら考えているようだった。

「店主さん?」

「わしの所で働くのはどうじゃ?」

「え?」

突然の提案に私は目を見開く。

「三色朝昼晩、
飯付きのバイトじゃよ!!

いやぁ、Aちゃんがうちで
働いてくれたら嬉しいのぉ!!

この頃、わしも年で腰が痛くなり始めて、
もう一人働き手が欲しいと
思っていた所なんじゃ!!」

「いや、でも…店主さんの店、
全壊してたじゃないですか?

店なんて…何処で…」

「なに、怪人如きに壊されようが、
道具さえあればまた道端からでも
始められるんじゃ!

沢山Aちゃんみたいな
お客さんが待っていてくれてると考えたら、
あんな事なんともないんじゃよ!」

雑草のように強かだなぁ…

「…、」

あれ?…そんなにお客さんいましたっけ?

いや、素晴らしい職人魂だとは思うぞ??
だが彼のあのボロい店にそんなにお客さんがいるような記憶がないのだが?

実際、私が行くときは
人なんて見たことなかったのだし
てっきり客は私一人だと思っていた…

「お客さんって私以外に居るんですかあの店に?」

「おぉ、ストレートにくるんじゃのぉ?
ハハハ、それもAちゃんらしい!」

「いや、ストレートって…
事実じゃないですか?だって見たことな、」

「まぁまぁ。
見ていなければ何とでも言えることじゃ。」

疑念の表情を向ける私を止めた店主さん。

「まずはわしの助手になって
実際にその目で見ると良い。」

「…、」

「どうじゃ?乗るか反るか。」

試すかのような言い草で
私に取引を持ちかけてくる彼。

「そうですねぇ、」

フン、舐めないで欲しい。

私は今回の件でしっかりと学んだのだ。

「確実に貰えるようにしたいんで、
給料は月払いじゃなく日払いでお願いします。」

そう言って彼の手を握り返した。



あぁ、確か
昔も同じように「彼」と
こうして契約を交わした。

懐かしいな。

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作者名:おぼろん | 作成日時:2021年9月16日 22時

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