過去編4 前編 ページ16
それからというものの、
私はうんざりする程に彼の話を
強制的に聞かされた。
もし耳を塞ごうものなら
耳を引きちぎるぞと言わんばかりだった彼、
そんな奴に睨まれてしまえば弱小の私に
拒否権などはない。
しかし…
そう悪いものではなかった。
いや、寧ろそれは私の胸の中の鼓動を高鳴らせた。
ありとあらゆる惑星に行っており
それでいて彼はとても自由奔放に
「荒らし回って」いるのだとか、
そんな彼の話はまるで御伽噺のようだった。
「それでな、A、俺は…」
こんな奴らが居た、
こんな惑星があった、
俺はこう言う奴と戦ったんだ…
滝のように止めどなく溢れる
宇宙の果てを超えた
それこそ彼が言う通り素晴らしい知識は、
いかに彼が「自由な存在」であるかを物語っていた。
(自由か…)
少なくとも此処で数百年の時を
寝転がっている私にとって、
彼はとても「人」らしいと思えた。
私が人とは弱い者と言った手前、
もし私がそんな事を口走ったら怒るだろうが…
普通に自由な彼を私は
羨ましいと感じてしまったわけだ。
それに気づいた私、
体を起こして膝を抱える。
「…本当に…君は最低な奴だ。」
この私の「退屈」を
まるでなす術もなく踏み潰される花のように、
こいつは問答無用で踏み躙ってきた。
もう、あの頃の平穏を感じていた
私には戻れない。
「退屈」を苦痛と感じてしまうのだろう。
あぁ、なんと言う事だ。
つまり彼と私は似たもの同士に
なってしまったわけだ…
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作者名:おぼろん | 作成日時:2021年9月16日 22時