知らないフリ 後編2 ページ28
「…、」
もしこれで、
彼らに契印が現れてしまったら、
彼らは一生、あの化け物に縛られる結果になる。
「晦冥」に、ましてや
こんなどす黒い闇に優しい彼らを
関わらせるなんて事、
絶対にしてはいけない。
その思いが私はイズナ君が近づく度に
一歩、また一歩と下がらせた。
「…ねぇ、どうして下がるの？」
「…駄目だ…面は外せない。」
私のことを覚えていてくれた…
それで十分じゃないか、
そうだろ、A？
「なぁ、A…」
「…、」
あの頃とはまた一トーン低くなった
もうすっかり大人となった彼の声が聞こえ
ふと顔を上げてしまう。
「A、」
私の名を呼ぶマダラ君からは
一切敵意など感じなかった。
あの頃とは何も変わらない繋がりが…
そこにはあったのだ。
「あの時はお前との
約束を俺は果たせなかった。
だが、もう一度…俺に、」
「違うっ、違うんだっ！」
私は今まで以上に声を荒げて
彼の言葉を否定する。
「頼むから…
私と関わらないでくれ。
だって私は…私はっ、」
もうこの時には動揺なんてものを
微塵も隠せていなかった私。
言葉はつまりつまりになるし、
声すら震えてしまう。
その時、
「晦冥様、カエデ様。
お迎えに参りました。」
「…テ、ンリ。」
「テンリ、やっと来ましたか。」
「お待たせしてしまい
申し訳ございません。
晦冥様、カエデ様。」
カエデがいつの間にか
彼に連絡をしていたのだろう。
もしもの緊急事態の時には
テンリの転移術を使うことになっている。
今がその時だと、
そうカエデは判断した。
「晦冥様、お手を。」
私に向かってテンリが
伸ばして来ていたその手、
そっと自分の手を重ねようとした時、
「…Aっ！」
マダラ君が咄嗟に私へとその手を伸ばし、
そしてマントの裾を掴んだのだ。
「行くな」
「マダラ君…あのさ、
覚えていてくれてありがとう…
すごく嬉しい。
でも私のことは…もう…」
忘れろ、なんて嘘でも言えなかった。
忘れて欲しくない、
ずっと覚えていて欲しい、
たとえこれから一生関わることが
出来なくても…
無い右手があらわになるが
構わないとばかりに
私はマントのボタンを外した。
「ごめん。」
そしてあの時みたいに謝って、
自ら繋がりを絶ったのだ。
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おぼろん(プロフ) - MAREさん» MAREさん、コメントありがとうございます！沢山オリキャラを出しすぎて皆さんの中でごちゃごちゃになってしまわないかとても心配だったのですが、楽しく読んで頂けているとの言葉、安心しました！楽しくお話を書き続けて行けるのも全て応援のおかげです！頑張りますね！ (2021年7月10日 17時) (
レス) id: fd0f1f35b3 (このIDを非表示/違反報告)
MARE(プロフ) - 続編おめでとう御座います！オリキャラも段々出て来て、ストーリーも進んでとても楽しく読ませてもらってます。 これからも頑張って下さい！ (2021年7月10日 16時) (レス) id: 7446762651 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おぼろん | 作成日時：2021年7月4日 14時
