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天才が馬鹿になった日 中編 ページ2

全身が痺れる感覚に私は目を覚ました。

(…こ、こは…?)

そう声を出そうとした途端
ゴポリといくつかの泡ぶくが
視界の中に見えた。

「…?」

(あぁ…そっか、夢か…)

最初はただただボーっとする思考に
私はいつものように「まぁ、いっか」精神で
流されるままだったのだが…

しかし…
一向にこの景色は変わる様子がない。

というか…

普通に息が出来ないのだ。

「っ?!!!」
顔が白くなり始めた頃だろうか、
やっとこれが異常自体なのだと気づいた私。

「〜っ、」
手足を動かしてなんとかもがく。

その際に鼻にまで液体が入ってつんと
刺すような痛みが走る。

(し、死ぬっ…)

あまりの苦しみに死を悟ったその直後、
私の手に何かが触れた。

生に、希望に縋りつこうとする意識は
無我夢中でそれを掴み、
残り少ない力で引っ張り寄せたのだ。

「っぁ…」
どうやら、私が咄嗟に掴んだものは
木の根っこらしい。

激しい勢いの流れに邪魔をされながらも
私はなんとか水から顔を出した。

「ゴホッ、ガハッ…はぁ…」
突如として肺の中に入ってくる空気に
私は激しく咳き込む。

しかし、
今度は肺が凍りそうな感覚に襲われた。

「さっ、ぶっ…っ…」

溺死の次は、
凍死させるつもりなのだろうか?

さっきは熱中症で死にそうだっていうのに…
この状況は一体なんなんだ。

パニックになりつつある私の思考。

しかしまたもや、
その絶望的な状況の中で
自分の目に映った陸地らしきものに希望を感た。

目に入った水、
そして生理的に流れ出てきた涙によって
ぼやけている視界の中、
なんとか私はその陸地へと
自力で這い出して見せた。

「はっ、はぁはぁ…ゲホッ。」

雪がうっすらと降り積もっているその地面。

体はびしょ濡れ、それに加えてこの気温、
そして凍えるような風。

なるほど…だから寒いのか…

「…あー…これは死ぬな…」

あまりの寒さに
震える声で私はそう呟いた。

三度目の正直、
それは今のこの私の状況にこそ
言えるのではないだろうか?

二度生きる希望を神は私に与えたもうたが、
三度目で私は希望すら失って死ぬのだ。

「…、」

いや、それよくよく考えてみれば
唯のゲスな神様じゃねぇかよ。

人の人生おもちゃにしてんじゃねぇぞ??

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作者名:おぼろん | 作成日時:2021年5月4日 16時

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