前途多難な子供達 後編4 ページ44
「ヒ、ヒルゼンッ？！」
カガミはまさかのヒルゼンの発言に
顔面蒼白だ。
「…、そうか。」
しかしその慌てようから
マダラは何やら感じとってしまう。
「ぞ、族長…さ、ま？どうか…」
「いや、構わん。何も気にするな。」
「…。」
その表情が何も気にするな、
という顔じゃないですけど？
なんて事を言える雰囲気でもなく。
ただただ手に汗を握りしめて、
カガミは自分が尊敬する族長様の
遠ざかる背を見送った。
「ふぅ、
まるで嵐が通り過ぎたような
感じだったわね。」
「そうだな。
あれがうちマダラか…」
マダラの前ではまるで
植物のように静かだったコハルとダンゾウ。
彼が見えなくなるや否や息を一息吐いて、
喋り始める。
「彼もイズナ先生と同じように
相当なイケメンだったわ。
うちはは顔も良い一族なのね。
カガミが羨ましいわぁ…私、
うちはに生まれてみたかったかも。」
はぁ、とまるで恋煩いのようなため息を
吐くコハルに呆れた目を向けるダンゾウ。
「はぁ…コハル、
お前はいつも顔しか見てないんだな。」
「何か悪い？ダンゾウ？」
「い、いや…別に。」
「はぁ…私、イケメンが多い
うちはと結婚しようかしら…」
「えっ、こ、コハルは…
うちはと結婚するのか？」
「もしもの話よ…もしも、ね？」
「そ、そうか…」
彼が犬であれば頭についていた
耳がわかりやすくぺたんとなっているのだろうが…
そんな淡い恋心を抱くヒルゼンに、
コハルが気付くことはない。
他人の恋路には鋭いというのに
自分の事となると彼女は
少々鈍感がすぎるのだ。
「…、」
シュンと落ち込むヒルゼンを
憐れむように見るダンゾウ。
三人共、
まるで他人事のように呑気すぎる…
と頭を抱え込むカガミ、
この中での一番の被害者だ。
「これから…
うちはが荒れるかもしれないっていうのに。
どうしよう…」
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