アキトの苦悩 前編 ページ21
くしゃくしゃになり
しかも血に染まった紙を見て、
ため息を吐く。
「結局、イズナは何を言いたかったんだよ…
いやいや、わかるよ？
悪いのは此処に入れた俺だけどさぁ…」
イズナからの手紙を
適当に懐に入れてしまった私。
首を斬られた事によって
吹き出した大量の血によって
文字すらも読めなくなってしまうほど
無残な状態になっていた。
仕方がないと私は自分の机の中にそれをしまう。
読めないものはどうしたって読めないのだ、
また今度会えた時に彼に聞くとしよう。
その時、こんこんと部屋に響くノック音。
「あぁ、入れ。」
「Aさん、僕です。
入ります、よ…？」
扉を開けて入って来たその人物は
私を見るなり声を失って
その手に持っていた湯飲みを地面に落とす。
ガシャんとかなりの音を立ててわれた湯飲みだが、
そんな事お構いなしにアキトは
真っ青な顔で慌てて走り寄って来た。
「ッ、Aさんっ！！
一体どうしたんですか？！！」
「あぁ、暗殺されそうになった。
気にするな。」
「暗殺って…
何普通にしてるんですか？？！
気にしない訳ないじゃないですかッ！！」
彼は辺りを警戒気味に見渡して
恐る恐る私に聞いてきた。
「Aさん、
それで…暗殺者は何処に？？」
「帰した。」
「は？？」
「だから、帰した？
あの男の事だ…
もう暗殺しにくる事もないだろ。
それに命が狙われるほど
俺が有名になっただけだし…
別にそんなに悪くなくない？」
私は少し興奮気味にアキトに報告をする。
「実はな？
フフフ、あいつをスカウトしたんだ！
此処に入ってこないかって！
彼、ダイヤモンドの原石だぞ、きっと！！」
「いや！何嬉しそうに言ってるんですか？！」
ムゥッと口を真一文字にして
血がついたままの畳を見ながら
そうアキトは大声で言う。
「そんな暗殺者、
信用出来ないですよ！！
Aさんは危険な目にまた会いたいんですか？」
「いや、
別に命が狙われるとかが嬉しいわけじゃない。
だがアキト、お前もわかるだろ？？
生憎、俺は首を刎ねても死ねないからな。
これほど暗殺し難い相手もいないだろ？」
「…いや…でも…
自分を殺そうとした
暗殺者を解放したんですよね？？
それに…迎え入れるって。」
「もし帰って来たらの話だけどな？？」
ここから逃げる可能性もないわけではないが…
殆どゼロに等しいだろう。
何故なら彼とは契約書を結んだのだから…
それもご存知、
署名集めで使ったあの「血の契約書」だ。
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