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「まあ認めずともよい」
にたぁ、と口角を上げた僧はAの艶のある藤色の髪を掴みあげる。数本は髪の毛が抜ける音がした。激痛が走る。
「いっ、た…ぃ…何をする…!」
「動くなよ、間違って首を斬られたくないはずだ」
Aは動かなかった。否、動けなかった。奴の殺気には冗談では無いことが分かる。下手に刺激は出来ない。だから、Aは黙って従ったのだが
「まあ、少し血が付いた方が面白いか?」
「…!」
僧は一息に鞘から刀身を抜き放ち、そのままAを斬った。
「っうぅ!ぐ、…」
致命傷とまでは至らなかったが、Aは背後から首をざっくりと斬られた。それと同じように、胸より下まであった藤の髪もばっさりと、落ちる。血はどくどく、と溢れ着物は少しずつ血に染まった。
痛みを耐えてはいるものの、感じたことの無い痛みにAは意識が持っていかれそうだった。
僧は、髪を拾い上げるとわざと血を付け、結紐で縛った。そして、Aの腕を掴み、Aはまた地獄へと返されるのだった。
「ぐっうぅ…」
**
最初に入れられた牢とは全く違った。音も聞こえない、人が通ることも無い真っ暗闇で寒かった。
「助けてもらえる、なんて考え今のうち捨てとけ」
僧は、鍵を掛けると去っていった。直ぐに音も聞こえなくなった。だが、気配がした。
「貴方はもう少し利口な人だと思っていましたよ」
突然、背後から現れたのはいつぞやの忍だった。Aは目線もやらず、吐き捨てるように言った。
「嘲笑いにでも来たか、ただの
「手足、ですか。散々な言い様だ。
それはどうと私は構わない。それより、貴方の怪我の手当てをしなければならない」
Aは、むっと顔をしかめて忍を睨む。
「敵に手当てなど、毒を仕込まれるのがおちだ」
突然肩を掴まれて、訴えるように忍は言った。
「ダメだ、貴方に死んでしまっては困る」
そのどこかまっすぐ過ぎる言葉にAは息を詰まらせ、どこか諦めたように言った。
「お前忍らしくないな。…好きにしろ」
よく分からない男だ。敵かと思えば、家族のように敵方の身を案じる。忍とはこのような者だっただろうか。
Aは黙って治療を受けた。
「っん」
「破廉恥な声は控えて頂きたい」
Aは顔を紅潮させて、涙目で怒鳴った。
「破廉恥じゃないっ!!痛いんだ!!」
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愛之助(プロフ) - そうです《自主規制》のひとりごとです^^ (5月21日 19時) (レス) @page39 id: 71bd857e36 (このIDを非表示/違反報告)
カケオレ - ま、まさか……薬〇のひとりごと……!? (5月21日 19時) (レス) @page39 id: 1b32a494c8 (このIDを非表示/違反報告)
愛之助(プロフ) - 玲さん» 作品の目次ページにボタンとCSSて書いてあるとこでオフにして貰えたらノーマルになるのでお願いします〜🙏💦 (2022年7月10日 21時) (レス) id: 71bd857e36 (このIDを非表示/違反報告)
玲 - すいません。とっても面白いんですけど背景のせいで文字が見にくいです。 (2022年7月10日 20時) (レス) @page39 id: be882aa841 (このIDを非表示/違反報告)
なーーみ(プロフ) - 愛之助さん» もう本当に感謝しかないです( ; ; ) ありがとうございます。 これからも頑張ってください。応援してます!! (2021年5月17日 22時) (レス) id: af11d71d69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:大手裏剣 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oh19years/
作成日時:2019年9月29日 1時