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翌朝、少女が目覚めると隣に青年は居なかった。いつもは居るのにどうして、と思い青年を探していると、置き手紙が一通あった。
《A
済まないが、私は今日から一週間出張に行ってくる。首領が如何しても、と煩くてね。
寂しいだろうけど、電話には出られるから安心して。
太宰》
たったこれだけの簡潔な、青年らしいと云えば青年らしい文章だったが、少女はそれならば仕方がないと納得し、一人出社準備を始めた。何せ、青年はマフィアの幹部だ。常日頃から忙しい。
どちらかと云えば寂しいのは青年の方なのではないかと少女は思う。
服を着替え、軽く朝食を摂り、少女は青年の居ないポートマフィア事務所へと向かった。
彼女の周囲の異変は、もう既に始まっていた。
「おはようございまーす」
少女がいつものように挨拶をしても、誰も返す者は居なかった。少女の声が小さかったわけではない。
皆聞こえていた筈だ。それなのに、挨拶を返さない。
少女は、あれ?とは思ったものの、皆忙しいのだろうと一人合点をした。
昼休み。少女は仕事をひと段落させ、同僚を昼食に誘った。だが、いつもなら笑顔で「いいよー」と云ってくれる同僚は、「…ごめん」と酷く無愛想に答えただけだった。
仕方なく、少女は一人で昼食を摂った。
午後、仕上がった書類を上司の元へ持って行くと、いつもは「はい、お疲れ様〜」と優しく云ってくれる上司も、書類を無言で受け取り、更には何だか嫌な物でも見たかのような表情をした。
少女は、自分が何かしてしまったのだろうかと不安に思い、小さな声で「…すみません」と云ってその場を立ち去った。
その日の夜。
家に帰り、部屋の電気も付けぬまま、少女は寂しさに泣いた。突然、訳も分からず同僚や上司から避けられるようになったのだ。無理もない。
一通り泣いてから、息を整え、少女は青年に電話を掛けることに決めた。
今日のことは夢かもしれない、明日になれば今日のようなことはないかもしれない。そんな一筋の希望に縋り、先ずはこの寂しさや辛さを紛らわそうと思ったのだ。
だが、彼女はそこで一つの可能性を考えた。
青年にも冷たくあしらわれたら、どうしよう。
ーーー
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D night(プロフ) - 待ってコメントに恥ずかしい誤字みつけたww (2021年4月20日 22時) (レス) id: 4cc2763b45 (このIDを非表示/違反報告)
D night(プロフ) - ちょーお久の更新…元々するする心算はなかったんだけどね…なんとなく気分で…。しかもアカウント姫ちゃんじゃないし…笑 (2021年4月20日 19時) (レス) id: 1966d427bc (このIDを非表示/違反報告)
yuuna(プロフ) - リクエスト失礼します!太宰治で浮気性夢主様とメンヘラ太宰が見たいです!お願いします!! (2021年1月31日 5時) (レス) id: a73b6209c2 (このIDを非表示/違反報告)
美紅(プロフ) - 翌日、賢治君がいなくなった捜査を開始する敦君谷崎、ナオミ、夢主信号を待つと背後から手に口を押さえられた中原裏通路に連れ去り口にはガムテープを貼られ後ろの手を縄で縛られたポートマフィア、黒蜥蜴、梶井基次郎がいる組合が死んで涙目が唸り声がするです (2020年10月27日 22時) (レス) id: 5e245d9090 (このIDを非表示/違反報告)
カンナ(プロフ) - 嘘吐き姫さん» ありがとうございます。のんびりお茶飲みながらお待ちしております(*´ω`*) (2020年8月24日 20時) (レス) id: ff159071ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:嘘吐き姫 x他1人 | 作成日時:2020年5月11日 17時