心に幸せが満ちてゆく夜 〔中也〕 ページ48
※メンへラ
「ただいま、A」
中也のその言葉に、私は心の風穴が塞がってゆくのを感じた。
「お帰り、なさい…!」
返す言葉が震えて、腕が勝手に中也の方へと伸びる。ずっとずっと、寂しかった。生きた心地がしなかったの。
中也の面影を追いかけて、中也との思い出の場所を何度も訪れたの。
でも、ただ切ないだけだった。
冷え切ったその心の凍土が、中也の全てで溶かされてゆく。
「泣くなよ、A。可愛い顔が台無しだろ?」
「だって、だって…!会いたかった、寂しかったよ、中也ぁ…!」
中也に抱きしめられて、心が幸せ色に染まってくる。
寂しさを紛らわそうと思ってお酒を呑もうとしたとき、間違えてグラスを二つ出してしまって、酒を呑む間も無く大泣きした。
二人で寝ていた寝台があまりに広くて、思わず中也の服を隣にいっぱい重ねて無理矢理眠った。
中也が居ればちゃんと出来る家事も、何もかも不安と寂しさでいっぱいになって、一つも出来なかった。
「寂しかったよな。ごめんな、A。でも、俺だって寂しかったンだぜ?
手前だけじゃねぇよ。安心しろ」
そう云って、中也は笑う。この声を聞きたいと、一体何度願ったことか。
今抱きしめるこの温もりを、離すまいとして腕に力を込め、中也の胸に頭を押しつける。
涙の次には笑いが込み上げてきて、私は嬉し泣きしながら笑う。
「うん、うん…!えへ、えへへ、中也だ。うふふふ、大好き。えへへへへ、うふふ」
壊れたように笑う私を、中也は優しく受けとめてくれる。
生きていてくれた。それだけでも嬉しいのに、中也は私に優しく迄してくれる。
いつもの調子で、弱音なんて一つも吐かずに。
その強さに、私は憧れる。
「三日間任務でいなかっただけで、ここ迄壊れちまうのか…。首領に頼んで、ちっとこういう仕事は控えさせてもらうか…。
依存体質、なァ…」
中也の独り言は聞こえない。
ただ、私の心には、幸せだけが満ちてゆく。
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嘘吐き姫(プロフ) - 大丈夫ですよ。了解致しました、謹んで書かせていただきます。レスありがとうございます! (2020年2月4日 16時) (レス) id: 346988f6d0 (このIDを非表示/違反報告)
リアビーバ- - あっ!すみません・・・コメントできなくて・・・!えっと夢主ちゃんは二人の想いに気づいてないほうがいいです! (2020年2月4日 15時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
嘘吐き姫(プロフ) - リアビーバ-さん» どちらでも大丈夫でしたら、私が勝手に書いちゃいます…。 (2020年2月3日 23時) (レス) id: ad6d962da2 (このIDを非表示/違反報告)
嘘吐き姫(プロフ) - リアビーバ-さん» 最後は夢主ちゃんは二人の想いに気づいた方がいいですか?それとも、気づかないまま…ですか? (2020年2月1日 16時) (レス) id: ad6d962da2 (このIDを非表示/違反報告)
嘘吐き姫(プロフ) - リアビーバ-さん» リクエストありがとうございます、承りました! (2020年2月1日 16時) (レス) id: ad6d962da2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:嘘吐き姫 | 作成日時:2019年10月14日 15時