貴方の傷痕 〔太宰〕 ページ35
或る寒い冬の夜のこと。
私たちはふかふかの寝台と蒲団に挟まれて、情事の余韻に浸っていた。包帯が解けて露われた、太宰さんの真っ白い肌。まるで外にしんしんと降り積もる雪のようで、彼の細胞は雪の結晶ではないかとさえ思う。けれども彼の雪は新雪とは程遠く、無数の傷痕が付けられている。
私はその傷痕をなぞってゆく。
ふふっ、と彼が擽ったそうに笑った。
「雪みたいに白い肌ですね、太宰さん」
「晒すのはAにだけだよ」
「じゃあ、此処の雪を食べられるのは、私の特権ですね」
私は彼の鎖骨の上の雪を高い方から低い方へとなぞり、その終着点に唇を寄せて一度口づけ、鎖骨に歯を立てた。軽く噛んでからもう一度口づけて、紅く小さな花を咲かせる。
「こうやって花を植えつけて、咲かせるのも…。ふふ、太宰さん」
「何だい？」
「薄っすらとですけど、包帯焼けしてますよ？」
「え、本当？ちょっと嫌だなあ」
軽口を叩きながらも、私は彼の雪に付いた傷をなぞるのを止まない。
沢山の戦闘の中でついた傷と、自。殺未遂の証である自傷痕たち。彼の新雪を切り刻み、そこに根づく。
それらは私にとって、忌まわしくもあり、彼の半生とともに増えてきた、大切な彼の体の一部でもある。せめて、これ以上増えてくれませんようにと祈りながら、傷痕に指を這わせる。
首のは首吊り未遂の痕。
手首には前職の任務でついたのか、手錠で擦れたような痕と、"痛い"や"苦しい"を嫌う彼には似合わないリスト。カットの痕。
脚には…沢山の謎の切り傷。
なんだこれは、と私が思っていると、ほの視線に気づいた彼は苦笑して云った。
「河を流れているとねぇ、烏に突つかれるのだよ。それと偶に、河の中の石にぶつかる」
腹や背、太腿にも銃痕らしき痛々しい古傷を抱えている。
私は太宰さんを、壊れ物を扱うように優しく抱きしめる。
「二度としないで、なんて云えないし、仕事柄危険な事も多いですよね。でも、お願いです。
私が生きている内には、死なないで？
貴方が致命傷を負っている姿なんて、死んでも見たくないの」
「…ふふ、死ぬ時は一緒だよ」
「でも、まだその時じゃないですよ？」
春を待つ夜の雪は、まだ溶けない＿＿＿＿。
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嘘吐き姫(プロフ) - 大丈夫ですよ。了解致しました、謹んで書かせていただきます。レスありがとうございます! (2020年2月4日 16時) (
レス) id: 346988f6d0 (このIDを非表示/違反報告)
リアビーバ- - あっ！すみません・・・コメントできなくて・・・！えっと夢主ちゃんは二人の想いに気づいてないほうがいいです！ (2020年2月4日 15時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
嘘吐き姫(プロフ) - リアビーバ-さん» どちらでも大丈夫でしたら、私が勝手に書いちゃいます…。 (2020年2月3日 23時) (レス) id: ad6d962da2 (このIDを非表示/違反報告)
嘘吐き姫(プロフ) - リアビーバ-さん» 最後は夢主ちゃんは二人の想いに気づいた方がいいですか？それとも、気づかないまま…ですか？ (2020年2月1日 16時) (レス) id: ad6d962da2 (このIDを非表示/違反報告)
嘘吐き姫(プロフ) - リアビーバ-さん» リクエストありがとうございます、承りました！ (2020年2月1日 16時) (レス) id: ad6d962da2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：嘘吐き姫 | 作成日時：2019年10月14日 15時
