七夕の星合 〔中也〕 2 ページ29
楽しい時間が過ぎるのはあっと云う間ってもンで、Aと2人で喋り倒した昼間には終わりが近づき、今は夕方。Aの誘いで、近くで開催される花火大会への準備中だ。
…俺はいいっつったンだが、Aの母さんに浴衣を着せられた。正直云って、途轍もなく恥ずかしい。
「中也君」
「はい」
「Aも着替え終わったから、此方来ていいわよ」
Aの母さんに呼ばれて隣の部屋に入ると、
「わ…!中也君って和装も似合うの…」
なンて莫迦なことを口走る、艶やかな蝶を纏ったAが。
「う、お…」
「どう?この浴衣、お母さんの趣味なんだけど…」
彼女は意外と厨二チックな趣味をお持ちらしい。
Aの浴衣は、黒地に真っ赤な花弁の椿とどこか艶めかしく見える薄紅色の蝶が
「…や、矢っ張り変かな?」
驚きに固まっている俺の反応に不安になったのか、恥ずかしそうにして眉を下げたA。
浴衣に似合わねぇ表情だな。
「いや、似合ってるぜ、A。ただ、Aは着るならもっと涼しげな…そうだな、金魚とか着てそうなイメージだったから、
「だよね。私もだよ。まあ、中也君が変じゃないって云うなら、このままでもいっかな!」
嬉しそうににぱっと笑ったAの笑顔には、矢っ張り金魚の方が似合うンだろうなと思った。
* * *
夕暮れ時、私たちはうちの近所で催される少し早めの夏祭りへと繰り出した。
近所だから、偶に私の同級生や先輩も居て、
「彼氏〜?」
なんて揶揄われた。
「ご、ごめんね、中也君。嫌だよね」
「いや…」
謝る私に、口ごもる中也君。
「寧ろ……」
何かを云いかけた中也君を無視して、一発目の花火が上がった。
「何か云った?」
「…いや。それより、もっとよく見える場所に行こうぜ?」
「あ、うん!そーだよね!」
中也君が何を云いかけたのかは判らないまま、私たちは花火に気を奪われた。
ある程度開けた場所に出て、花火も見やすくなった。
でも…何だろう。
花火は綺麗で、中也君は隣に居て、すごく楽しい夏祭りの筈で…。でも、この花火を見終わって、家に帰って、寝て、朝起きたら、…
中也君と、また会えなくなるなんて。
そんな事がふと私の胸を掠めて、きゅっと心臓が苦しくなった。中也君に触れていれば、こんな苦しみも消えるのだろうか。
「ねえ、中也君…」
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嘘吐き姫(プロフ) - 大丈夫ですよ。了解致しました、謹んで書かせていただきます。レスありがとうございます! (2020年2月4日 16時) (レス) id: 346988f6d0 (このIDを非表示/違反報告)
リアビーバ- - あっ!すみません・・・コメントできなくて・・・!えっと夢主ちゃんは二人の想いに気づいてないほうがいいです! (2020年2月4日 15時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
嘘吐き姫(プロフ) - リアビーバ-さん» どちらでも大丈夫でしたら、私が勝手に書いちゃいます…。 (2020年2月3日 23時) (レス) id: ad6d962da2 (このIDを非表示/違反報告)
嘘吐き姫(プロフ) - リアビーバ-さん» 最後は夢主ちゃんは二人の想いに気づいた方がいいですか?それとも、気づかないまま…ですか? (2020年2月1日 16時) (レス) id: ad6d962da2 (このIDを非表示/違反報告)
嘘吐き姫(プロフ) - リアビーバ-さん» リクエストありがとうございます、承りました! (2020年2月1日 16時) (レス) id: ad6d962da2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:嘘吐き姫 | 作成日時:2019年10月14日 15時