ベビーブーム2 ページ3
寝室から去ろうとするモーゼフを、Aは慌てて引き留める。
「陛下は入られないのですか?」
「よいよい」
モーゼフは笑って言った。
「儂は先ほど逢うて来た。それに逢いたいと思えばいつでも逢えるしな」
「グレイグ陛下、マルティナ陛下、失礼いたします」
入室して扉を閉め、打って変わって砕けた態度になる。
「マルティナ、久しぶり!ご出産おめでとう」
「ありがとう、A。いらっしゃい」
Aの祝いの言葉に礼を返したマルティナは、いつもは纏めている黒髪を降ろし、ゆったりとした部屋着姿で出迎えてくれた。
部屋着と言っても見苦しさを全く与えず、凛とした美しい佇まいは流石だ。
グレイグも今までで一番穏やかな表情を浮かべており、王として、父親として更に一回り大きくなった様に見える。
「おめでとう、グレイグ」
「ありがとう、ホメロス。エリオスは変わりないか?」
「ああ、乳をよく飲み、よく眠る」
グレイグとホメロスも、お互い友として、父親同士として挨拶を交わした。
そんな光景を微笑ましく見つめながら、Aは持ってきた包みをマルティナに手渡す。
「これ、産着と、少し大きくなった時の衣装。気に入ってもらえるといいのだけど……」
受け取ったマルティナは、丁寧に包装された包みに目を輝かせた。
「ありがとう!早速開けさせてもらうわね。――――――まあ、素敵!」
包みから現れた衣装に、喜びの声をあげるマルティナ。
中からは上等な絹で作られた、肌触りがいい上に洗練されたデザインの服が数着姿を見せたからだ。
裾にレースをあしらったり、胸元に控えめながらも地味にはならない、上品なリボンが縫い付けられたものなど、目を見張るものばかり。
「さすがAね。センス抜群だわ」
「本当?気に入ってもらえてよかった!」
心から喜んでいるマルティナに、Aも安堵した笑みを浮かべる。
マルティナはくすりと笑い、傍らに置かれた小さなベッドに手を掛けた。
「紹介するわね。―――私たちの娘よ」
ぎこちない手つきで、でも大切にそっと抱き上げ、Aとホメロスに見せてくれる。
「わあ、可愛い……!」
滑らかな白い肌に、母を継いだと思われる緑なす黒髪が映えている。
生まれて間もないにも関わらずはっきりとした顔立ちは、将来さぞかし美女に育つであろう事を予想させた。
「フォリア、って名付けたの。巣箱と言う意味よ」
「巣箱?」
「ええ」
マルティナは、穏やかに優しく微笑む。
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遠山すずか(プロフ) - リスタさん» リスタ様、コメント有難うございます!当小説を読んで頂けてとても嬉しいです^_^不定期ですがこれからも更新頑張ります。 (2022年9月7日 10時) (レス) id: 370e3ef134 (このIDを非表示/違反報告)
リスタ - 初コメ失礼します!ほとんど見ました!面白いです♪ (2022年9月6日 23時) (レス) id: 85e8ed9632 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遠山すずか | 作成日時:2022年8月13日 3時