始まりの出会い3 ページ27
「いいじゃないの、グレイグ。Aがそう言っているんだもの。A、貴方もそんなに固くならなくていいのよ」
マルティナがそう宥めてくれたが、母ライマに「女性たるもの、お行儀よくしなくてはいけませんよ」と言われている手前、固くなるなと言うのはかなり難しかった。
どうしようかと幼い頭を悩ませていると、傍らにグレイグとは別の意味で見とれた、グレイグと手合わせをしていた女性の姿が目に入った。
「あ、あの…」
Aはその女性のあまりの美しさに見とれながら、頬を紅潮させて言った。
「女の人でも、騎士になれるんですか?」
「へっ?」
素っ頓狂な声を発したのは傍らにいたマルティナだった。
グレイグもあんぐり口を開けてAを見下ろしている。
対照的に女性は眉間に皺を寄せ、その顔にははっきり不快の色が現れていた。
「?」
自分は、何かヘンな事を言ってしまったのだろうか?
とりあえず今の女性の顔がグレイグの巨体より怖く感じ、マルティナの後ろに隠れる。
「くっ。ははははっ!」
真っ先に気まずい沈黙を破ったのはグレイグの豪快な笑い声だった。
そのあまりの大きい声に何事かと、他の訓練をしていた兵士たちも遠巻きにA達を見ている。
「笑うな、グレイグ」
突き刺す様な低い声が、笑い声に向けて放たれた。
「え?」
Aは聞こえてきた方角を見て、一瞬目を疑った。
どう考えてもこの女性が発したとしか思えない。
でも今の声は…
「ぷぷぷ、Aったら」
マルティナも無邪気な可愛らしい声で笑っている。
「あの、マルティナ…?」
「A殿、いやA、ホメロスは男だ」
「ええっ!?」
咄嗟に金髪の女性、もとい男性をAは改めて見上げる。
グレイグに比べたらかなり華奢に見えていたが、単体で見てみるとそれなりの体格を持った男性である事が確認できた。
そしてその表情はかなり気分を害した様で、Aを鋭い目で睨みつけている。
「ご、ごめんなさい!!」
頭をがばりと、低く下げて謝る。
私ったら何て事を…!
男の人を女の人と間違えるだなんて。
ああ、きっと凄い怒らせてしまった。
怖さと申し訳なさでそのまま動けずにいると、やがて呆れた様な溜息が聞こえてきた。
「分かればいい」
思いのほか柔らかい声に、Aはそっと顔を上げる。
先ほどの険しさは消えた、端正な顔がそこにあった。
何故か目を逸らす事ができずに、食い入る様に見つめる。
「何だ」
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作者名:遠山すずか | 作成日時:2018年10月31日 10時