始まりの出会い2 ページ26
中庭に案内されたAは、温かい日差しと美しい花に優しく迎え入れられた。
「うわぁ、ホントにきれい!えと…マルティナ?」
先ほどの父の様子を思い出し、ためらいがちにマルティナを呼んでみる。
マルティナは満面の笑顔で返してくれた。
「なぁに?」
「ありがとう、こんなステキなところに連れてきてくれて!」
「ふふっ、どういたしまして。お花もいいけれど、もっと好きな場所があるの。来る?」
「うん!」
次に案内されたのは、何やら屈強そうな男達が剣を奮いまわしている広場だった。
兵士たちが全員剣を持って、ひとりで素振りをしていたり、対人で手合わせをしたりしている。
Aはその中でも、ある2人に目を止めた。
片方は紫髪の、長身で肩幅も広い逞しい巨漢の男、もう1人は腰まで伸びた金の髪を首元で結び、痩躯ながらも虚弱さを全く感じさせない、それでいて繊細な美貌を持つ…女性?
剣技を全く知らないAから見ても、この2人の腕が他の兵士たちの群を抜いているのがはっきりと分かった。
巨漢の男はその体格に相応しく、体重にありったけの力を剣に乗せて攻撃を仕掛ける。
対する美しい女性は見るからに重い一撃を器用に受け止め、巨漢の攻撃を跳ね返した。
「すご…い…」
Aが陶然と見とれていると、やがて2人がこちらの視線に気づき、訓練を中断してこちらに歩いてきた。
「姫様、またこちらにいらしたのですか。危ないから来てはなりませぬと…ん、その子は…」
巨漢に見つめられ、Aの身体が固くなる。
遠くから見ていても迫力があったのに、至近距離にいられてはその威圧感はかなりのものである。
「は、はじめまして、Aです…」
マルティナに少し寄り添いながら、Aは答えた。
「グレイグ、Aは私のお友達よ!大丈夫よA、グレイグはとっても強くって優しいの」
そう言って、尻込みするAの背中を押してくれる。
「A……おおこれは!マルス殿のご令嬢でしたか。不躾な真似を失礼いたしました」
グレイグと呼ばれた男は、Aの前で片膝を着いて頭を下げた。
「え、えっと…あの…そんなにかしこまらないでください」
Aはあたふたしながら、目の前の巨漢に話しかけた。
理由は自分でも分からないが、Aは目上の人に敬語を使われるのが苦手だったのだ。
「お父様はお父様、私は私ですから…」
「しかし…」
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作者名:遠山すずか | 作成日時:2018年10月31日 10時