始まりの出会い1 ページ25
夢主の過去の話です。
ラブラブ度はほぼゼロです。
ご了承下さいませ。
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Aが父マルスに連れられて、デルカダール城に来たのはようやく物心がつき始めた4歳の時だった。
「陛下、ご機嫌麗しゅう存じます。Aを連れて参りました」
騎士に見張られる扉をくぐり、一礼して玉座の間の中央へ進んで足を止め、マルスは再度一礼する。
「うむ、マルスよ、そしてA、来てくれて感謝するぞ」
父マルスに次いで、突如王に話しかけられてAはあたふたした。
「あ、はいへいか、おあいできてこうえいにございます」
今朝がた母に教わった挨拶を咄嗟にするA。
初めて行う作法に加え、緊張していたせいもあって酷くぎこちないものになってしまった。
そんなAを、デルカダール王は威厳な容姿に反して温かい目で見つめ、豪快に笑った。
「ハッハッハッ、そう固くならずともよい。今日そなたを呼んだのは他でもない、儂の娘と引き合わせたかったのでな」
そう言って王は、傍らに控えていたAと同じ年頃の少女の背中を押し、前に出した。
そのお陰で、父親譲りの気の強そうな瞳、それでいて気品のある顔立ちをした黒髪の少女の顔がよく見えるようになる。
「娘のマルティナだ。丁度そなたと同じ歳になる」
「陛下のご息女で姫様だ」
父にそう耳打ちされ、先ほどよりは緊張が解け、なめらかな挨拶ができた。
「ひめさま、はじめまして。おあいできてこうえいにございます」
ドレスの裾をつまんで一礼するAに、王女マルティナは破顔して、あどけない笑顔を浮かべた。
「はじめましてA。私の事はマルティナって呼んで」
「え、でも…」
Aはそれでよいのかと父を仰ぎ見た。
マルスもいつになく戸惑った様子で、とりあえずAの視線を受け止めた後で王へ問う視線を向ける。
王は目じりに皺を寄せて頷いた。
「よいよい、子供は子供同士仲良くできるのは良い事じゃ。あえて大人の上下関係を子供にまで強要する事はあるまい」
「はぁ…」
マルスはいささか居心地悪そうに曖昧な返答を返す。
「マルティナよ、Aに城を案内してやるがよい。そうだ、そろそろ中庭の花が美しく咲く頃ではないかな?」
「はい、お父様!行きましょ、A!」
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作者名:遠山すずか | 作成日時:2018年10月31日 10時