光へ虹の橋を【ドラゴンクエスト11】

現在編２９−決着、そして新たな旅立ち― ページ37

「その呼び名、あえて否定はせぬ。―――だがウルノーガよ、裏切り者と言うのは貴様もだろう。私が貴様の過去を、知らぬとでも思ったか？」

「冷徹なる軍師」の微笑みをその口元に浮かべたホメロスの言葉に、ウルノーガの目がこれ以上ないほどに見開かれる。
だがやがて、自虐の様な笑いと共に視線をイレブンに移し、イレブンの足元辺りで止まる。

そして、息絶えた。

「時を遡ってきたのはお前だけだと思うなよ・・・」

そう、言い残して。






数日後。

「それじゃA、行ってくるわね」

城門で、マルティナとAは手を取り合っていた。
マルティナの額には、王より譲り受けた母である王妃の形見の黄金のティアラが輝いている。

「ええ、マルティナ。従者なのに、ついていけなくてごめんなさいね」

マルティナは首を振り、優しい眼差しで言った。

「いいのよ。このお城を守るのだって貴方の大事な役目だもの。私が帰ってくるこのお城をね」

高い城門を感慨深げに見上げる。

ウルノーガを斃した後、すぐデルカダール王は意識が戻ったが、16年操られていた身体は大きな負担がかかっていたようで、マルティナとの再会を喜んだのも束の間、すぐ深い眠りに着いたのである。

その後、イレブンの祖父でありユグノア前王妃の父であるロウにより、デルカダール王がウルノーガに操られていた事、ホメロスはウルノーガに利用されていたに過ぎなかった事を話し、裏切り者の汚名からは解放された。

更にウルノーガとの戦いの際に見せた、兵たちや来賓客への采配、今後の自分なりの償い及び国の方針案に少しの落ち度も見られぬ点などから、将軍の地位も返上とはならなかったのである。

表向きはホメロスは無罪放免なのだが、王により「イシの村の復興に全力を尽くせ」との懲罰を受けた。
と言っても王なりのホメロスへの期待と気遣いなのだろう。
そしてホメロス自身、それをわかっている様だった。

ところが、これでめでたしめでたし、とは行かなかった。

訪れた平和に喜んだのも束の間、天高くに赤く輝く勇者の星が突如その高度を下げ、禍々しい雲に覆われながら地上に住む人々の前にその巨大な姿を現し始めたのである。
それを見届け、直ちにイレブン一行、グレイグ、ホメロス、Aは馬を駆りデルカダール王国南東の海岸、デルカコスタに赴いた。

バクラバ砂丘上空にとどまるかつて勇者の星と呼ばれていたものは禍々しい気配に覆われ、赤黒くその存在を主張していた。

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