氷柱とわたし (ページ6)

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その弐ページ6

「……どうして、鬼を斬るんですか」
ふと声が出た。
「人間を襲うから？」と疑問形で答えられた。

「俺が人間である以上、鬼とは敵対するからね。でも、鬼とも仲良くしたいと思っているよ」
「私は、鬼があそこまで憎まれる理由がよくわからないです」
「どうして？Aだって鬼に親を殺されたんだよね」
「殺されましたけど……鬼って、人間を食べないと生きていけないんですよね」
「そうだねぇ」ふむ、と少し考える仕草を童磨はした。

「それって、普段肉や魚を食べることもある私たちと何か違ったところがあるのでしょうか」
街に出たときに食べた牛肉。あれが初めて食べた肉だった。美味しかった。
魚は好きだ。秋刀魚は美味しい。でも、私が食べた肉や魚たちだって本来普通に生きていたはずだ。
命を戴くことに変わりはないのだから。人間ってそこまで特別な生き物なのだろうか。

「難しい質問だね」と童磨は言った。
「確かに鬼が人を喰らうのは自然の摂理に従ったことだよ。ずっと人間以外は弱肉強食で生きてきたんだから」
「なら」
「でもそれに抵抗する権利がないわけではないよね」
ハッとする。

「鬼も人を食べる権利があるし、人も抵抗していいんだよ」
優しく頭を撫でられた。
「もしAが鬼に食べられてもいいっていうなら別にいいんだけど、抵抗しても構わないよ」
実際俺も抵抗する側だしね、と笑っていた。あのにっこりとした優しい笑顔で。

「抵抗、してもいいんですよね」
「うん。特にAは女だからしっかり抵抗する術を身につけないと」
女は栄養価が高くて狙われやすいと以前聞いた。

「鬼の殺し方、教えてください」気が付いたらそう言っていた。
「いいよ。でも今日は帰ろうか」

朝日が昇ったら、また説法の時間だ。