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#11-2…果てない夢を ページ49

カチャリ、シューと開いた扉をくぐり、
Aさんが医務室の奥に直行した。

さっきまであんなに弱気だったのに
それが全部もう吹き飛んだのかと思う程にサクサクした行動だった。


医務室奥の処置室の寝台に眠っていたのは、
胸に大きな穴が空いたサイ。

でも、出発前にドクターが教えてくれた深い闇は無く、
代わりに薄く淡い水色の光が揺蕩っている。

寝台の横に置かれた胸の破片を見て、

「ちゃんと全部ここにある…。
有難いわ…。」

そう呟き、彼女はカンテラを開けて、
融合した彼女達を手のひらに出した。
ねぎらう様な視線を優しく光る焰に向けたAさんは、
一度オルタの手を握り直し、


焰に口付けをした。



ぐらりと一度大きく揺れた焰は、尽きてしまいそうな程大きく燃え盛り始めた。




そのままAさんに穴に導かれた焰は数度揺らめくと
目も開けていられない様な激しい光を放った。


思わず瞑った目の奥で、
舞台挨拶の様に仲良く手を繋いで礼をし、
何処か遠くへ駆けていく案内人たちの姿が見えた気がした。




「起きて良いのよ。
お疲れ様、はじめまして、ニア。」


静かな声が聞こえたからゆっくり目を開けると、
そこには、寝台で信じられないとでも言いたげな顔をしている、
目を覚ましたサイがいた。




「あ…貴女が、オリジナル?」


「ええ…ごめんなさい。
貴女には一番酷な役割を背負わせてしまったわ。」


心から謝罪するAさんの声を聞いたサイは、
全力で首を振って笑顔で否定した。


「ううん、良いの。
確かに今思い出すとあそこはやなことばっかりだったけど、
でも貴女が私をあの施設に送ってくれたから、
私はとっっても素敵なものを沢山観れたんだ‼
このドレスも、ネックレスも、全部、ここのみんながくれたんだ。
私に一番似合うって。私にあげたいって!
いろんな言葉もかけてくれたの!


私ね、すごく幸せだったんだ。
今、心が全部あるからよく分かるの‼
全部全部、とっっても嬉しかったんだぁ!」


無邪気にはしゃぐサイの複雑な青い目には光があった。
もうあの空虚な瞳は無くて、
さっき見た案内人達は皆この子の中に還ったんだと分かった。


皆此処にいる。
向こうであった全員は、こうして皆幸せを領受することが出来ている。
それが、俺にはとても嬉しくて、
サイがどんな目にあってきたのかを初めて聞いた時の様に泣き始めてしまった。

#11-3…愛し君へ→←#11-1…一縷の希望(立香side)



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アルっさん(プロフ) - 皐摩さん» ありがとうございます!ちゃんと“皆が幸せに思う”終わりを目指していくので、今後ともよろしくお願いします(*´-`) (2019年4月18日 7時) (レス) id: 627f8f5340 (このIDを非表示/違反報告)
皐摩(プロフ) - めちゃくちゃ楽しみながら読ませて頂きました!!更新楽しみにしてます!! (2019年4月17日 23時) (レス) id: 8434b91720 (このIDを非表示/違反報告)
オレンジジュース(プロフ) - アルっさんさん» 見ました!ものすごいことに…! (2019年2月20日 18時) (レス) id: ea02e12f92 (このIDを非表示/違反報告)
オレンジジュース(プロフ) - アルっさんさん» お互いに頑張って行きましょう! (2019年2月7日 20時) (レス) id: ea02e12f92 (このIDを非表示/違反報告)
アルっさん(プロフ) - オレンジジュースさん» ありがとうございます(*´-`)これからも頑張りますね! (2019年2月7日 19時) (レス) id: 7837a26b84 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アルっさん x他1人 | 作成日時:2019年2月7日 18時

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