溶け残った深い藍【FGO】【クー・フーリン・オルタ】 (ページ44)

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#9-2…虹は雨の花と言うページ44

「落ち着いたな、行くか。」

だいぶ呼吸が落ち着いたAに声をかけて、
腰掛けていたベッドから立ち上がった。

が、

「ま、待って…。」

棘のついていない尾の先を少し引っ張り、
Aが弱々しく呟いた。

「……どうした。もうここに用は無いだろう。」

実際この空間が少しずつ収縮していることは明白だ。
全ての問題が解決されたが故に、特異点はもう崩壊を始めている。

「その、違くて、本当に申し訳ないのだけれど……
ずっと寝ていた所為で足が動かなくて…。」

「……早く言え。」

小さくごめんなさい、呟いたAの頭を乱暴に撫で、姫抱きした。

「…っっっっっ‼‼‼⁉⁇」

前から恥ずかしいと言っていた抱え方をしてやれば、
羞恥に顔を赤く染めたAが俺の胸に顔を寄せた。
見られたくないんだろうが、
俺はイイ物が見れたと口の端が上がった。

「で、どこに向かえばいい。」

今はふざけている場合では無いと、
顔を引き締めて問う。

「…虹の向こうに。雨の終わりに、出口はあるの。」

未だに恥ずかしさで顔を隠しているAがゆっくり呟いた。
先程と比べてまた声が少し小さくなっている。

「どうした。」

「…急にここを維持するのに使ってた魔力が私に還ってきてるから、
ほわほわして、眠くって……さっきまであんなに寝てたのに…。」

「なら、眠っていろ。
目覚めても俺は居る。約束する。」

「……ふふ。うん、おやすみなさい…。」

俺らしくない臭いセリフを聞いて気が緩んだのか、
Aは直ぐに眠ってしまった。

足元に咲き誇る小さな花は、俺が踏んでも不思議とすぐに立ち上がった。
愛らしい癖に折れないというところも、よく、Aに似ている。

普通なら届かないはずの虹も、歩けばすぐに辿り着いた。

成る程、無機質な、カルデアの扉がぽつんと立っていた。

少し振り向いて、Aが創った景色を見渡した。
ようやく思い出した。

ここは、この景色は、他のサーヴァント達に屁理屈でレイシフトさせられた、
荒らされる前の何処かの花畑だ。
疲れたAを癒すと言う名目で連れ出された、俺が想いを伝えた場所。
泣きながら応えてくれたAがとても綺麗だった。

虹を目印にしたのは、
雨上がりの虹は雨が創り出した花だと、
俺に教えたことからだろうか。

もう来ることのない場所を目に焼き付ける。

少しボロい扉に手を翳し、
開いた先は、Aの身体の前だった。