【GL】もしも彼女が悪役だったら。 (ページ10)

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8話ページ10

｢起きて｣
｢ん……｣

何者かの声によって、私は起こされる。回らない頭で、いつもと景色が違うなあとか思いながら。

｢うわああ！｣
｢そんな幽霊見たような反応されても……｣

目の前には面立ちの整った制服姿の女子。ここで私は、昨日の出来事がフラッシュバックされる。そういや、結局長話しちゃって寝るのが遅くなっちゃったんだっけ。と回らない頭で思い出す。私は上半身だけ起こすと大きく伸びをする。私は制服のスカートのポケットに入れていたクシを取り出し髪の毛を梳かし始める。

既に身支度が整っている磬が目に入ると｢支度が早いなあ｣と心底思った。が、私はいつものようにのんびりと朝を過ごす。磬はそんな私を見ると何ともないような表情をしながら口を開いた。

｢私達、寝坊しちゃったね｣
｢え？……は！？｣

恐る恐る壁に掛けられていた時計を見ると、そこには8時30分を示す針が。朝のホームルームは8時40分から。この市の最寄り駅から学校までは2駅。最寄り駅まで送ってくれるバスはおおよそ10分かかる。……終わった。

｢ゆずと2人揃って遅刻だ｣
｢言ってる場合じゃないから！｣

私は急いで支度を始める。急いだところでもう間に合わないけど。

｢遅刻とかには厳しいんだ｣
｢成績がいい磬には私の気持ちなんか分からないもん！｣

勉強が得意でない私は、少なくとも学校生活では先生から高評価を得たい。だから、2年間遅刻と提出物だけは気をつけていたのに。昨日の夜はそんなことまで忘れていたらしい。磬を急かすと私達は即座にこの場を立ち去った。

｢はー……、最悪｣

やっとの思いでバスに乗ったものの、時刻は8時40分を過ぎてしまった。何らかの間違いで時が進まないでくれないかな、と思いながらずっと腕時計を見てそわそわしていたが、ついさっき40分を過ぎた。そして、今の言葉。

｢ならあんなに喋らなければ良かったのに｣

隣に座る磬は意外と余裕そうで。この時間のバス内はやっぱり混み合っているが、ぎりぎりのところで2人とも座れた。なんでこんなところは運があるんだ。

磬はそわそわしていた私を気にすることなく英単語帳を手に持っていたが、私が声を放つと横目で私を見てそう口を開いた。

｢……昨日は磬と夜更かししたかったの｣
｢うわー、意味深｣
｢……最悪｣

でも案外、遅刻も楽しいものかもしれない。彼女が隣にいてくれるとそんな事さえ考えてしまう。