11話 ページ16
いつぶりにこんなに町を走っただろうか。
否、こんなにも必死に走ったのはこれが初めてかもしれない。
私は、由梨と訪れた場所を徹底的に探る。
しかし彼女は見つからないまま、もう2時間程度は経っただろうか。お酒の酔いも冷めずに、頭も使い物にならない状態で必死に彼女の姿を探す。
今、彼女はどこにいるのだろうか。
彼女はとっくに警察官の元から離れていて私たちの元へいるはずだった。
しかし、彼女は家へは帰ってこない。
きっと、彼女の事だから「これ以上迷惑をかけたくない」なんて理由だろうか。
私は、心配と怒りでお酒の酔いに負けない程に思考を巡らす。
周りから今の私を見たらきっと無様だろう。しかし、周りのことを気にする余裕もない。
私は、前に訪れた事のあるカフェの周りも必死に捜索する。
今は夜だということもあり、視界もあまり良くはない。
そんな状況で、女性の声が私の耳元で響いた。
「もしかして……子供をお探しですか?」
と。両腕で小さな子供を抱き抱える30代らしき女性が私に話しかけた。
「子供ではないんです」
私は周りからそのように見られていたのか、と感じた。確かに、探していることには変わりないのだが周りが思っているような人を探している訳では無い。
私が探しているのは、金髪で未成年の癖に煙草を吸っている目付きの悪い不良の彼女。
しかし、私はそれを言えるはずもなく「ありがとう御座いました」と女性の元から去っていく。
探すところはもう探した筈だ。
初めてデートをした場、私と彼女のお気に入りのファミレス店の周りなど。
私は溜息を1つ、はぁっとつく。運動不足だった私には既に限界が近付いている。
そこで私は「あっ」と1つ声をあげる。
まだ、大切な場所へ行っていなかった。
もしかしたら、そこにいるかもしれないと私は少しの希望を持つ。
そして私は、初めて由梨と出会ったネオン街の暗い路地へ向かう。
そして、ネオン街はあの時のように明るく妖艶な雰囲気を醸し出していた。
そういえば、由梨と出会った時もこんな暗い時刻だったっけ。私はあの時を思い出し通った道をひたすら徘徊する。
するとあの時と同じ場所で同じ姿の女の子が目に入る。
私は、こういう子を見ると注意せずにはいられないのだ。
そんな私は、いつも以上に怒りを込めて女の子に声をかける。
「ねぇ、若い子がこんなところで何してるの」
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ゆ - 尊い (2019年5月12日 17時) (レス) id: 0c30cd4e30 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのキッコーマン(プロフ) - 途中までしか見ていませんが、とても僕はこの作風好きです!これからも更新頑張ってください! (2019年5月5日 18時) (レス) id: 6ae7a02465 (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく(プロフ) - ありがとう御座います!そんなこと、あるんですね笑 もしかしたらその小説の作者さんと気が合うかもしれません笑(?) (2018年12月31日 14時) (レス) id: b9c47787f2 (このIDを非表示/違反報告)
Fall ill apple(プロフ) - お気に入りさせてもらいました。余談ですが私の好きな小説の主人公(?)と同姓同名で少し驚きました…笑 (2018年12月31日 13時) (レス) id: c31f5fcd9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪見だいふく | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mayu02071/
作成日時:2018年12月29日 16時