32話 ページ37
「多分、ないと思うけどさ」
私は由梨にそう、いきなり声をかけた。さっきデコピンされた所はまだヒリヒリしている。ずっと一緒にいると忘れてしまうが、由梨はヤンキーの男と張り合う程の強さがある。
何故か、由梨は容赦なく私にデコピンをしてきたので今更ながら痛みが強くなってきた。
「私の嫌なところとかあったりする?」
そう言うと、うーんと頭を悩ませる由梨。
やっぱり無いよなぁと、ほっとした瞬間、由梨は「そうですね……」と声を放った。
「まぁ、言えばきりがなくなるんですけど」
「全部言った方がいいですか?」
「ふぁっ」
いや、それは無いだろう。あまりに予想外の台詞に私は随分マヌケな声が出てしまった。
由梨はフリーズしている私の返事を聞く前に、口を開き始める。
「まずは、すぐに怒るところ」
「生真面目過ぎるところとか」
「欲求不満なところもありますよね」
「まぁ、後は話が長いところとか」
「そのくせ人の話は何故か聞いてくれないところですかね」
「う”っ」
全ての言葉が私の胸にグサッと思い切り突き刺さってきた。
え、こんなにある?
私はこれの倍は少ないと思うけども。私はあからさまに落ち込むと、由梨は私の頭に手を乗せ、優しく撫でてくる。
「でも今は一周回って大好きですよ」
「〜〜ッ!もう、ほんとに……」
私が言葉にならない台詞を言おうとすると、いつもの様に優しく笑ってくる由梨。
「私も大好きだよ〜ッ!」
と、思いっきり由梨に抱き着くと由梨は「うわっ」と声を漏らした。
「明日、奢ってあげる……っ!」
今はでかい由梨の胸なんて気にならない。顔を思いっきり彼女の胸に埋めながらそう声を放った私。
「奢ってもらいたいときは、こうすれば良いんですよ」
「分かりました?」と声にする由梨に対し「あっ」と声を漏らした。
まさか、まさかだが。これはもしかして……はめられたパターンのやつですか?
そういや、今思えば元々私が奢ってもらう予定だったのに、何故私が奢ることになってたんだ。
私は恐る恐る顔を上げるとまるで絵に書いたような黒い笑みを浮かべる彼女。
「ば、ばか!」
結局、私は由梨には敵わないと自覚させられたのだった。
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ゆ - 尊い (2019年5月12日 17時) (レス) id: 0c30cd4e30 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのキッコーマン(プロフ) - 途中までしか見ていませんが、とても僕はこの作風好きです!これからも更新頑張ってください! (2019年5月5日 18時) (レス) id: 6ae7a02465 (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく(プロフ) - ありがとう御座います!そんなこと、あるんですね笑 もしかしたらその小説の作者さんと気が合うかもしれません笑(?) (2018年12月31日 14時) (レス) id: b9c47787f2 (このIDを非表示/違反報告)
Fall ill apple(プロフ) - お気に入りさせてもらいました。余談ですが私の好きな小説の主人公(?)と同姓同名で少し驚きました…笑 (2018年12月31日 13時) (レス) id: c31f5fcd9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪見だいふく | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mayu02071/
作成日時:2018年12月29日 16時