only you side ページ20
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乳白色の入浴剤が入った浴槽から出て、体を洗う。
その白さが、私の体中に広がった朱色と対比する。
小さなものがほとんどだが、所々大きな内出血もある。
いつのものかなんて忘れてしまった。
キヨは、耐えられないんだ。
私が他の人間と接することが。
それをこういう形で発散しているんだと思う。
こう実感するのも、いつものこと。
全て終え、急いで体を拭く。
帰ってすぐ私がお風呂に入らせられるのは、きっと匂いを消すだけじゃなくて。
自分の好きの形を見せることで、私を愛してることを自覚させているのかなあと、最近になって思うようになった。
わざわざ入浴剤を白色にしているのも、これを強調するためなんじゃないか。
頭をガシガシ拭きながら、そんなことを考えてみる。
まあ、考えることに特に意味はないけど。
だって私は、満足しているから。
化粧を落とし、ひどくやつれて見える自分を鏡に映す。
ドライヤーを手に持ったままぼーっとしていると、脱衣所のドアが開いた。
鏡に映ったキヨも、私も。どちらも無表情のまま二秒経つ。
そしてキヨは後ろから私を抱きしめ、鼻から勢いよく息を吸った。
『ふふ、Aの匂い。俺の大好きなAだ』
「ほんと？良かった」
『うん…あー、またAドライヤーしてないな？今日も俺が来るの待ってたの？』
首筋に顔を埋め、私に回した手に力が入る。
すりすりと頭を押し付けてくるキヨの髪がくすぐったくて、でもそれも心地よくて、自然に笑みがこぼれた。
機嫌が良い時と悪い時の差が激しい分、スキンシップは嬉しい。
「んーと、仕事で疲れちゃったから。ぼーっとして、っ、」
『今は俺との時間だろ。俺が他のこと話していいって、考えていいって言うまでダメって。
何回言ったらわかんの？』
私の髪に指を通し、優しく梳いていたその手に急に力が入った。
ガッと髪を引っ張られ、耳元に口を寄せて低い声で囁かれる。
鏡越しに目が合った。
ああ、今日もキヨの瞳は真っ黒だな、なんて。
痛みよりも先にそれを考えた。
「ごめん、ね。ちゃんと気を付けるから」
『うん、次は痛いことしなきゃいけないよ。俺もしたくないんだからさ？』
「わかった。…んーと、髪、乾かしてほしいな」
『もー仕方ないなあ。Aのこういうわがままならいくらでも聞いてあげる』
ニッコリ笑ってドライヤーの電源を入れた。
頭を触られるふわふわした感覚に目を細め、口角を上げた。
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作者名：さつき | 作成日時：2020年8月12日 3時
