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「あんたのことは、Aから聞いてるよ」
『あ、あぁ…え?Aが俺のことを?』
「そうだって言ってるだろ。めんどくせえ」
そう言いながらダルそうに木に寄りかかり、視線を落として話す牛沢。
いや、会った時と態度変わりすぎてて何が起こってるかわからねえんだけど。
俺名乗っただけで何もしてないだろ。俺こそ最初は態度悪かったけどさ。
どういう状況かわかっていない俺となぜかイライラしてるコイツとの間には気まずいを通り越して険悪なムードが漂っている。
いやいや、それも俺のせいじゃねえんだけど。
何が何だかわからない、という顔をしている俺をよそに、牛沢は俺を睨みつけてきた。
「単刀直入に言う。Aはもうあんたには頼らない。でもその分苦しくなるだろうから、Aがあんたに頼ってきたときは聞いてやれ」
『…は?何の話だよ』
「そのままだよ。あんたの出る幕じゃない。Aの世界にあんたはいないってことだ」
思わず手が出そうになって、拳を握りしめながら後ずさりする。
形容しがたい苛立ちがどこからともなく湧いてきたのには自分でも驚いた。
だがそんな俺を見て軽く笑った牛沢に気づけば、この気持ちの理由もすぐに見つかった。
俺、コイツのことを生理的に受け付けてないんだわ。
ああそうか、そういうことだ。
話の主導権を握らせない姿勢とか。わざとらしい物言いとか。俺は最初から、掌で転がされてるんだ。
誰だよお前。何だよその目は。
お前は俺たちの何を知ってる?…違う、Aの何を知ってる?
「Aのことどういう人だと思ってんの?」
『どうって…優しくて、周りのことちゃんと見てる、とか』
「それ!言ってほしかったわ。百点。Aに近そうで、一番遠いから」
「Aは優し“過ぎる”。周りに気をつかい“過ぎる”。それに気づかないあんたは、やっぱり全く分かってない」
『あ?さっきからマジで何言ってんの?お前こそAの何なんだよ』
「それ知りたいなら、明日の放課後Aの家近くのファミレスに来い。わかると思うから」
じゃあ、と言って牛沢は俺の肩を掴んだ。背が低いわりに力は強い。
話をしてるときは真剣だった表情にも、今は明確な敵意が見える。
「あと、これだけは言っておく」
「絶対に、Aに告白したりするなよ。あんたの気持ちなんてどうでもいい。Aのためを思うなら、仲がいい兄妹のままでいろ」
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作者名:さつき | 作成日時:2020年8月12日 3時