77 ハイルグルッペン ページ43
『なるほど、そっちはそうなっとるんやな』
「うん、結構大変」
私はリビングに協力者達を集め、モニター越しにトントンと対話していた。
我々だの方でも、会議室にメンバーを集めてモニターを全員で見ているようで、後ろにチラチラと他のメンバーが見えている。
「…あ、兄貴!」
『…A…』
「兄貴…!すぐにそっち戻るからね!待っててね!」
「…先輩!僕もいますよ!」
『うるさい勝木。俺の涙を返せ』
「え?泣いてくれたんですか?」
『…黙れ』
私と兄貴の感動の再会に割って入った勝木に、珍しく兄貴が口を滑らせた。
眼光鋭く勝木を睨む兄貴だけど、あんまり怖くない。
その再会ムードをさえぎるように、ユーゴが咳払いをした。
「まだ再会できると決まってはないから。
…ちょっとそちらさんと予定を合わせたいんやけど」
『おう、分かっとる』
「なら一応。俺らが脱出するタイミングに合わせて、そちらさんも出撃頼める?」
『ああ、問題ないで』
ユーゴとトントンが冷静に話し合う。
なんでタイミング合わせないといけないの、という疑問はさすがに抱かなかった。
私達がアルクローネから脱出した先に誰も居なかったら、もう一回食べられて終わりだろう。
それを防ぐために誰かがいてほしい。
あと、どれぐらいの規模かは分からないが、腹を突き破られるわけだから、アルクローネへのダメージは大きいだろう。
その瞬間を叩くためにも、彼らの出陣と私達の脱出のタイミングを揃えることは必要だ。
「なるべく、早い方がいい。アルクローネが力を付けてきてるからな」
『マジか。なら…』
『明日だ』
トントンの後ろから、黒い軍服が見えた。
グルッペンだ。
さっきまでベッドで休んでいた彼は、軽い足取りでモニターに近付き、優雅に笑う。
その背をトントンが引き止めた。
『おい、まだ休んだ方が…』
『なるべく早い方がいいのだろう?』
「そうやな、明日が一番ええわ」
『ならば、明日、我々は出陣する。そちらも合わせてくれ』
「分かった」
『…そろそろ電池が切れるな。では、武運を祈る』
ユーゴが頷き、グルッペンが満足そうに目を細める。
そして、彼が緩く手を振った時、モニター画面が消えた。
私の方ではなく、トントンの方の指輪の電池が切れてしまったようだ。
明日、我々は出陣する。
グルッペンの言葉が頭を回る。
あんなにワクワクするような宣言は、世界中を探してもないだろう。
ハイルグルッペン。
私は消えたモニターに、そう呟いた。
270人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
フール(プロフ) - アイウエオだよさん» 一応ピポポポのつもりです。分かりづらくてすみません…。ピポポポを使うところは話数的に自然消滅しました…。能力的には某竜依頼のパルプン○です。 (2019年4月3日 2時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
アイウエオだよ - 鬱先生の“あの能力”とは‥‥‥ (2019年4月3日 1時) (レス) id: 7bcfa840f4 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - テルさん» ありがとうございます…!これから少し忙しくなるので、更新が遅くなってしまうかもしれませんが、頑張ります! (2019年3月25日 20時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
テル - 更新来た!無理せず頑張ってください! (2019年3月25日 19時) (レス) id: ed9aff9576 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - d!すこすこさん» ありがとうございます!なるべく早めの更新を心がけて、頑張ります! (2019年3月20日 14時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:フール | 作成日時:2019年3月20日 12時