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65 食害予約 ページ30

「準備はいい?」
「何の?」
「アルクローネの胃の中、入るで」
「…わ、分かった」
「気ぃつけや。空気にのまれないように」
「はい!」
「…行くぞ」



「…え?」









「っ、あー、参りました」
「どうも」


ひとらんの刃を首に受け、俺は大太刀を下ろした。
やっぱり片腕だけじゃ無理か。
ひとらんは太刀を鞘に収め、マスクの下だけで笑っている。


「片腕なくてそんなに強いんだね」
「いや、弱い」
「そう?」
「片腕が無くなったことで、何か新しい視点が見つかるんやったらええんやけど…」
「…マイナスをプラスにするのは難しいでしょ。無理しすぎたらダメだよ?」


彼が俺の肩を叩く。
口先だけで返事すると、怒るような視線を向けられた。
仕方なく、笑いながら冗談だと言ってやるが、あまり意味はなかったようだ。
彼の心配を痛く受け止めながら、俺は大太刀を鞘に収めた。
その瞬間。


「終わった?じゃあ次俺な!」
「っ!?」
「アイツすぐ終わっちゃってん。だから、アンタ代わりにやってや」


ナイフが背後から振り下ろされ、俺は反射的に再び大太刀を抜き、受け止めた。
ゾムの無邪気な笑みが、フードの中から漏れている。
見ればリョウが奥の方で、打ち上げられてからしばらく経った魚のようにグッタリしていた。
なるほど、アイツは長続きしないからな。


「じゃあ、分かった。やろか」
「手ぇ抜かんといてや?」
「抜いたら死にそうやからな、抜けへんわ」


小さな複数のナイフを大太刀で捌くのは難しい。
片腕が無いから精密な動きも出来ないし、かなり今の俺とコイツは相性が悪いな。
…やれるかどうか分からんが、やってみるか。
俺は片腕に能力を込めた。


「どうやろか」
「っ、うわ!かっこい!」
「……そうか?」


片腕から黒い炎を能力で出し、腕の代わりにする。
ゾムの目がキラキラしているが、気にしないことにしよう。
この腕、使ってみると案外扱いづらいが、特訓すればそれなりに様になりそうだな。


「ええやんショウ。気に入ったわ」
「…そりゃあ何より」
「後で飯、一緒に食べへん?」
「おう。構わんよ」


ゾムの誘いに頷くと、ひとらんの方から小さく悲鳴が聞こえたような気がした。
なるほど、噂には聞いていたが、これがゾムの食害って奴か。
怖いなぁ。
リョウも捕まえるか。
俺もアイツも、平均ぐらいは飯を食えるはずだ。
二人でかかれば何とか…。


「決定やな。楽しみやわ」


あー、数時間後の俺、吐いてそう。

 

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フール(プロフ) - アイウエオだよさん» 一応ピポポポのつもりです。分かりづらくてすみません…。ピポポポを使うところは話数的に自然消滅しました…。能力的には某竜依頼のパルプン○です。 (2019年4月3日 2時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
アイウエオだよ - 鬱先生の“あの能力”とは‥‥‥ (2019年4月3日 1時) (レス) id: 7bcfa840f4 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - テルさん» ありがとうございます…!これから少し忙しくなるので、更新が遅くなってしまうかもしれませんが、頑張ります! (2019年3月25日 20時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
テル - 更新来た!無理せず頑張ってください! (2019年3月25日 19時) (レス) id: ed9aff9576 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - d!すこすこさん» ありがとうございます!なるべく早めの更新を心がけて、頑張ります! (2019年3月20日 14時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:フール | 作成日時:2019年3月20日 12時

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