６０ 見えざる腕 ページ25
「…ショウ、タバコは駄目だって」
「何で」
「傷に障るよ」
「…これがないと、俺死ぬから」
「ちょっと…」
しんぺい神が俺が咥えていたタバコを奪い、灰皿に押し付ける。
次のタバコに火を点けると、呆れ顔でため息をつかれた。
もう諦めたのか、彼は他の怪我人の元へ移動していく。
俺はこの怪我人達の中では重傷な方だろう。
腕が一本どっか行ったわけだからな。
右腕か利き腕じゃないだけ、まだマシだ。
片手ぐらい無くなっても、別に生活に大きな支障はないし。
…もう手当ては終わっているはずだ。
傷は塞がっていなくても、出血は収まってるわけだから、これ以上医務室にいても邪魔なだけだろう。
「しんぺーさん、俺帰るな」
「えぇ？まだ薬とか…」
「俺よりも優先せなアカン人、おるやろ」
「っ、けど、用意が追いついてないから、個室ないよ」
「…いや、個室いらん。リーダーさんにそう伝えてくれ」
「え？」
俺は医務室のベッドから降り、部屋を出て行った。
そんな今日ここにやってきたばかりの俺に、個室があるなんて思ってもいない。
最初から、アイツの部屋に行くつもりだ。
俺は廊下を何となくで歩き回り、彼の名前が下げられた部屋へと辿り着いた。
ノックもなく、ドアを開ける。
「ショウ？」
「ん」
アホみたいな面がこちらを向く。
リョウは俺に驚いた顔をしていたが、すぐに腕に視線をやり、目を伏せた。
俺は贅沢に部屋の真ん中に置かれていたソファーに座り、タバコの煙を吐き出す。
「どうしたん」
「俺、ここで寝るから」
「……わかった」
詳しくは聞かず、リョウはただ頷いた。
こういう時、俺が大嫌いな彼は無駄に気が利く。
俺はソファーに寝転がり、タバコを携帯灰皿に押し付けて、目を閉じた。
痛い。腕が痛い。そこにあるはずのない腕が、痛い。
「っ…」
「ショウ」
「…触んな」
目を閉じたまま腕を押さえようとするが、そこに腕はない。
苦痛に呻く俺の背をさすろうとしたリョウの手を払い、冷たく告げると、彼は手を下ろした。
「…すまん」
「……」
「その、お前が知っとるかどうか、分からんから言うけど…。Aは…」
「黙れ。それ以上言うな」
体の震えが止まらない。
言葉では伝えられていないが、Aがどうなったのかは何となく知っていたし、分かっていた。
「…言わんといてくれ…」
「すまん」
「…っ」
目から零れ落ちるそれが憎らしい。
俺のせいだ。
この腕の痛みも、彼女の死も。
全部、俺のせいなんだ。
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フール(プロフ) - アイウエオだよさん» 一応ピポポポのつもりです。分かりづらくてすみません…。ピポポポを使うところは話数的に自然消滅しました…。能力的には某竜依頼のパルプン○です。 (2019年4月3日 2時) (
レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
アイウエオだよ - 鬱先生の“あの能力”とは‥‥‥ (2019年4月3日 1時) (レス) id: 7bcfa840f4 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - テルさん» ありがとうございます…！これから少し忙しくなるので、更新が遅くなってしまうかもしれませんが、頑張ります！ (2019年3月25日 20時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
テル - 更新来た！無理せず頑張ってください！ (2019年3月25日 19時) (レス) id: ed9aff9576 (このIDを非表示/違反報告)
フール(プロフ) - d!すこすこさん» ありがとうございます！なるべく早めの更新を心がけて、頑張ります！ (2019年3月20日 14時) (レス) id: baf0519c25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：フール | 作成日時：2019年3月20日 12時
