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『、』
と考えていたら、嗅ぎ慣れた香りが鼻腔を擽る。
「あ、ウルド様」
『ウルド』
振り返れば、そこにはウルドがいて。
じっと私を見つめるアカに微笑む。
『お疲れ様です』
「ああ」
『東京に行くんです？』
それに彼は頷いた。
『これから《物語》が更に加速しますねぇ』
「…」
『いろいろ出てきますよー。あーんな奴やこーんな奴まで』
「わくわくじゃん」
『フルボッコ祭りよろしくです』
人間、吸血鬼、天使、悪魔…そして、神。
『あーあ。眩しいなぁ』
太陽に掌を翳す。
かつては《ソコ》へ行こうとした。《みんな》で辿り着こうとした。そうすることで、全てを失ってしまったけれど。
『どうすれば、あの男を引き摺り落とせるのか』
と、考えて首を横に振る。
これは私の望みではない。ラファエラの望みだ。
『…うっざ』
小さくそう呟いた私を、ウルドとルクさんは見下ろす。
「あまり考え過ぎるな」
「そうそう。どうせ俺らがやることは変わらないんだから」
『…フルボッコ祭りですね分かります』
「気に食わない奴らを血祭りにするんだぜ。楽しみだなぁ」
『吸血鬼界公式の血祭り喜んで参加します。血が滾るぜ』
「血の気が多い奴め」
『ルクさんもじゃん』
まぁ、とは言えどうせそんなに殺しはしないのだろう。吸血鬼はそんなことに興味がない。
人間の命なんて、どうでもいい。
『…ウルド』
「なんだ」
『お腹空きました』
「…来い」
その言葉に笑みを浮かべると、ウルドの首の後ろに腕を伸ばす。
そんな私の背中に彼も腕を回すと、密着する身体を包むほろ苦いカオリ。
ぺろり、とウルドの首筋を舐める。この皮膚の下に流れる甘美な血が欲しいと叫ぶ本能に抗うことなく、ぶつりと牙を穿った。
「、」
じゅるるっ、と血を啜る。
芳醇で、濃厚で、ほろ苦くも甘露のような血。
背中をゆったりとさする大きな掌。
『ぷは、』
唇についた血を舐め取る私をじっと見下ろしていたウルドが顔を寄せてきて。
『ん、』
啄むようにキスをされる。
相変わらずいちゃついてんなぁ、とルクさんが呟いたのが聞こえた。
『…んー』
ぎゅう、と抱き付いて額を擦り付ける。
『んー』
背中を撫でる掌が心地よい。ずっと微睡んでいたい。
微睡んで、堕ちて、そして。
永遠に、このヒトの側にいるのだ。
『…』
だから私はラファエラなんかには負けない。
唇を噛み締めて、視界に映るシロを掻き消した。
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作者名：クウ | 作成日時：2023年4月5日 20時
