44、諦めを受け入れて後ろを向け ページ44
××
───せっかく頑張ってここまで来たのに、結局疑われることになってかわいそう。
お願い、お願いだから出てこないでと心から祈った。嫌だ、認めたくないの。あなたを。あなたという人格を。けれどそんな私とは裏腹に、鏡の中にいる私は、微笑んでいた。これは私なのだろうか。今の私はどこまでが私なのだろうか。この意識は本当に私の、七竈Aのものなのだろうか。
───気を遣うのも、頑張るのも、もうぜんぶ嫌だなって思ってるくせに。
それは私の分身で、私のことをだれよりも深く理解していた。その癖、平気で私を傷つけてくる。いつから
私は、
───でも、一人なら自由だよ。
なんにも我慢しなくていいの。誰の顔色を伺う必要だってない。嫌われる心配だってない。
やめてほしい。
やめて。お願いだから黙っていて。
頭が痛む。視界が滲む。テーブルに畳まれていたスカァトから薬を取り出して、それを噛み砕いて飲み込んだ。矢っ張り薬は必要だ、持って行こう。
「失礼します。後数分で天空カジノに到着します」
ノックと共に先刻、マダムの荷物を持っていた
「何かあったの？泣きそうだね！」
「……いえ。別に……」
「僕で良ければ話、聞くよ！ほら水でも飲んでさ」
見知らぬ他人に話すからこそ少し楽になれるんじゃないかな、と男は笑う。Aは躊躇いつつもここに来るまでにあったことを端折りながら語った。
「……信じて欲しいとは云わなかったのかい？」
「……信じてくださいとは、云いませんでした。信じてくださいと頭を下げるようなことはありません。そもそも、疑わしき行動ばかりしてきた私が根本的に悪いのですから信じても何もありません」
Aは受け取ったコップを飲んだ。
そっか、と男は軽く呟いてAの目の前に膝をつく。そして何も持っていなかった手から一輪の花を出した。
「……これはお近づきの印に！」
渡されたのは咲き立ての花のように赤々とした薔薇の花。
「天空カジノに、到着だよ」
**
45、煌びやかなカジノの支配人→←43、たまたま恵まれていただけ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3428人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柊あんず(プロフ) - 香さん» いつもありがとうございます〜！早速五部の続編もあげましたのでぜひ！！はい、番外編の方の更新はいつになるか分かりませんが今後とも宜しくお願いします…(笑) Twitterやコメントなど、本当に感謝しきれません…！ (2020年6月28日 19時) (
レス) id: 30d83766f8 (このIDを非表示/違反報告)
香 - 四部完結おめでとうございます！四部は七竃ちゃんが不憫すぎて...五部でどんな展開になるのか楽しみです！ Twitterフォローさせて頂いたり、番外編の方のリクエストもさせて貰いました！五部も楽しみに待ってます！ (2020年6月28日 18時) (レス) id: 7e95bd0132 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 後書き。 これにて四部は完結となります！ページ数が足りなすぎて今回はここで書くことになってしまいました。ラストの表紙は竹やま様より。四部の感想などもありましたらぜひ(笑) それではまた近々五部でお会いしましょう！！ (2020年6月28日 0時) (レス) id: 30d83766f8 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 香さん» ありがとうございます！四部もあと少しで終わりますからね！毎回感想を頂けてとっっても励みになります…！ふふふ…続きが気になると仰って頂けるのは作者として本当に嬉しいです…！今後ともどうか宜しくお願いしますね！ (2020年6月20日 20時) (レス) id: 30d83766f8 (このIDを非表示/違反報告)
香 - 更新されてる！！今回もとても面白い話ばかりでした！探偵社と七竃ちゃんの距離がだんだん開いていってしまうようでハラハラしてます。続きが気になりすぎる！！ (2020年6月19日 7時) (レス) id: 7e95bd0132 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
