7、さらば、逃げるが勝ちだ ページ7
××
「あの……私は……探偵社に───」
「帰りたいわよね、A」
お祖母ちゃんの靴が、私の足の上に乗せられ、ぐりぐりと踏みつけられる。あくまで、余計なことを云わないようにと。私の発言を遮ったお祖母ちゃんに「アンタに聞いてるわけじゃないんだけどねェ」と与謝野先輩が眉を寄せた。
「……とにかく、これ以上この子に関わるのはやめてください」
「……どうして。どうしてそんなにAちゃんを退社させたいんですか」
「決まっているでしょう。地元に戻って、普通に暮らしてもらう為です。本当は十八になったら迎えに来る予定でしたが……」
威厳と自信に満ちていたお祖母ちゃんの表情が僅かに曇る。その一瞬の陰りに妙な胸騒ぎを感じた。
「武装探偵社。少し調べさせて頂きましたが、荒事を専門にするお仕事なのでしょう？そんな何時命を落としても可笑しくない仕事を十七の娘にさせるなんて……あまりに常識から外れているとお思いになりませんか？」
「っ……でも、Aちゃんは探偵社員ではなく、事務員なのでそういった仕事はしていません！」
「している、していないの問題ではないのよ坊や。そんな場所に身を置いていることが問題なんです。全く忌々しい……そもそも、こんな話し合いの時間こそ無駄というもの」
もう行きます、とお祖母ちゃんは一方的に会話を切り上げ立ち上がってしまう。
「Aちゃんはこれで良いのかい？……君らしくないじゃあないか。抗うこともせずただ黙っているだけなんて」
「……太宰先輩……」
───私が助けてあげようか。
太宰先輩の唇が、確かにそう動いた。
刹那、冷水を浴びせられたように私の脳は覚醒し、ぼんやりしていた視界にはっきりと色が戻った。
「A……来なさい！」
お祖母ちゃんの手が高く振り上げられる。
───ぶたれる。そう悟った私は反射的に目を閉じた。
「ギリギリセーフ」
恐る恐る目を開くと太宰先輩がお祖母ちゃんの手を掴んでいた。彼の動体視力と反応の良さにその場にいた全員が目を見開く。
「離しなさい！無礼者！」
「Aちゃん、とりあえず逃げて」
「えっ！？」
話通じなさそうだから、と本人が目の前にいることを気にも留めず太宰先輩は云って退けた。しかし今、どんなことを云ってもお祖母ちゃんの決意が揺るがないということは私にも分かっている。
「っ、ごめんなさっ……！」
私はお祖母ちゃんの横を通り過ぎ、探偵社から飛び出した。
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柊あんず(プロフ) - 乳酸菌 チーズさん» こちらの方にもコメントありがとうございます！目……目、大丈夫ですか！？ムスカ大佐！？((( (2020年1月25日 21時) (
レス) id: 5d7d3376c6 (このIDを非表示/違反報告)
乳酸菌 チーズ(プロフ) - 目ッ…目がァァ……！！！← (2020年1月25日 20時) (レス) id: df6c59ac1d (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 果汁ジノ％さん» 国木田さんがいたのはアニメですね！確認しましたがやっぱり原作のパーティーに国木田さんはいなかったのでもう既にあの時には捕まっていたんだと思います！よってこれは伏線ではありません……(笑) (2020年1月25日 19時) (レス) id: 5d7d3376c6 (このIDを非表示/違反報告)
果汁ジノ％(プロフ) - 原作では国木田さんもパーティーに出ていたような…まさか、逮捕の時期が早まったのも伏線なのか…！？ (2020年1月25日 19時) (レス) id: 119f59d457 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - ひいやさん» コメントありがとうございます〜！33話の伏線、そして腕の件は四部でちゃんと回収するのでご安心ください〜！「緑の灯」についてはフィッツジェラルド様の著者「グレート・ギャツビー」からの引用になるので、完全に史実ネタですね！ (2020年1月25日 11時) (レス) id: 5d7d3376c6 (このIDを非表示/違反報告)
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