32、大人になるということは ページ33
××
「手掛かり、見つからないね……」
「はい……」
あの後、目撃情報や証言の聞き込みを再開したが、結局手がかりになる情報を見つけることは出来ず、私達は探偵社に戻った。
「あれ、国木田さんや敦くんは……」
「その二人なら、太宰を捜しに行ッたよ」
しん、と静まった社内に与謝野先輩の声が響いた。太宰先輩はまた何処かに行ってしまったのか。彼は何時もそうだ。人を置いて、一人で何処かへ消えてしまう。
「与謝野さん……社長の具合は？」
「……未だ検査を終えてないから何とも云えないけど意識が戻るかは微妙なトコだねェ。国木田達が戻って来たらすぐに病院に運びたいンだけど……」
「そんな……」
「とりあえず、国木田達の帰りを待とう。……A、そんな顔するもんじゃないよ。社長は大丈夫さ」
「っ……はい……」
与謝野先輩は何時ものように気丈に振る舞っているが、しかしそれでもかなりのショックを受けていることは明らかだった。それは谷崎先輩も同じだ。
……何か、私に出来ることはないだろうか。
何か、何でも、良い。何でも。
───そうだ。
私はゆっくりと二人の視界から消えるように身を引いて、給湯室に向かった。
***
「与謝野先輩、谷崎先輩、珈琲です」
両手に珈琲を一つずつ持った私は、谷崎先輩と与謝野先輩に手渡す。二人は驚いたように目を瞬かせた。
そりゃあ勿論、うずまきのマスターの珈琲とは比べ物にならないがけれど初めて淹れるにしては頑張った方だと思う。
「A……ありがとう。けれど、なんだって急に……」
「……以前、組合戦の時に落ち込んだ国木田先輩と私に珈琲をくれたのは、与謝野先輩でした。だから、私もあの時の与謝野先輩のように」
「……あぁ、そういえばそんなこともあったねェ。よく覚えていたね、そんなこと」
覚えているに決まってます、と微笑みを返す。
与謝野先輩は何時も格好良くて、気遣い上手で私よりずっとずっと大人の女性だ。何時か、私も与謝野先輩のように自然な気遣いが出来る立派な女性になれるのだろうか。
「アンタみたいな可愛い後輩を持って妾も谷崎も幸せ者だよ」
「いえいえ、そんな。私もお二人のような先輩を持って───あ、そういえば、乱歩先輩は？」
「あぁ。乱歩さんなら医務室に」
「じゃあ、乱歩先輩にも珈琲届けに行って来ます！」
乱歩先輩には珈琲よりもココアの方が良いかもしれない、砂糖多めでとびきり甘くしたものを。
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柊あんず(プロフ) - 乳酸菌 チーズさん» こちらの方にもコメントありがとうございます！目……目、大丈夫ですか！？ムスカ大佐！？((( (2020年1月25日 21時) (
レス) id: 5d7d3376c6 (このIDを非表示/違反報告)
乳酸菌 チーズ(プロフ) - 目ッ…目がァァ……！！！← (2020年1月25日 20時) (レス) id: df6c59ac1d (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 果汁ジノ％さん» 国木田さんがいたのはアニメですね！確認しましたがやっぱり原作のパーティーに国木田さんはいなかったのでもう既にあの時には捕まっていたんだと思います！よってこれは伏線ではありません……(笑) (2020年1月25日 19時) (レス) id: 5d7d3376c6 (このIDを非表示/違反報告)
果汁ジノ％(プロフ) - 原作では国木田さんもパーティーに出ていたような…まさか、逮捕の時期が早まったのも伏線なのか…！？ (2020年1月25日 19時) (レス) id: 119f59d457 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - ひいやさん» コメントありがとうございます〜！33話の伏線、そして腕の件は四部でちゃんと回収するのでご安心ください〜！「緑の灯」についてはフィッツジェラルド様の著者「グレート・ギャツビー」からの引用になるので、完全に史実ネタですね！ (2020年1月25日 11時) (レス) id: 5d7d3376c6 (このIDを非表示/違反報告)
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