不機嫌の公式、可愛いの定義。 ページ17
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練習は、7時前に終了した。
薄暗くなった空の下で片づけをした後、
皆、制服に着替えて。
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サザンウィンドに、
野球部全員でぞろぞろ、と向かう。
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「鈴森さん、」
「ん?」
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呼ばれた声に振り返ったら、
学ランの第2ボタンまで開けた、
江波戸くんがいて。
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なぁに?
と首を傾げたら、
くすくす、と笑って彼が近づいてきた。
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「また、」
「え?」
「ほら、ここ、」
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彼の長い指が首筋に伸びてくる。
セーラー服の襟の部分に、
す、と一瞬触れさせて。
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「はい、なおった、」
「・・・ありが、と」
「うん、」
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にこにこ、
彼が笑う。
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自然に、江波戸くんは私の隣に並んで。
癖なのか、
ふわふわの髪の毛を、
片手でくしゃくしゃ、と乱した。
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「江波戸ー!」
「・・・なに?」
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前にいた、亀沢くんに呼ばれて。
いつもの、優しい声で返事をした江波戸くんは、
駆け寄ってくる亀沢くんを見て、
なんだよ、とちょっとだけ眉をひそめた。
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「さっきのさ!」
「さっき?」
「俺が、打ったヤツ!」
「あぁ、うん、」
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亀沢くんが、
大きく振ったバットは、
偶然か必然か、
空に響く音を鳴らして、
赤岩くんの指から離れたボールを打った。
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「すげぇ、よかったよな!!!」
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江波戸くんの肩をつかんで、
ぐい、と顔を近づけては、
無邪気な顔で笑う。
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「な!!!」
「うん、すごく良かった、」
「ほらー、キャプテンも言ってる!!!」
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江波戸くんの優しい褒め言葉を貰った亀沢くんは、
白尾くんや赤岩くんが歩く輪の中に入って行った。
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