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「私は、お姉様の婚約者が誰になるかを賭けているような貴族達の中に、私を助けてくれるような人がいるとは到底思えません」
「ジェシー……」
ジェシーはしっかりと誕生祭での事を見ていたのだ。
「誰を信じればいいのか分からないのです。食事に毒を盛られているかもしれない、寝ている時に暗殺されるかもしれない、そんな恐怖がずっと私の身体にまとわりついているのです」
ジェシーはせきを切ったように話し出した。
「今までは第三王女として影でぬくぬくと生きていたのに、突然皆から注目を浴びて。少しでも隙を見せればつけ込まれてしまうような感覚に耐えられないのです」
「私はこれからどう皆に振る舞えば良いのでしょうか、それさえも自分で考えなくてはならないのですか?朝目が覚めて思ったのです。私には王位を継ぐ資格が無いと」
「だから……」
そうジェシーが言いかけた瞬間、部屋のドアが乱暴に開かれた。
「さっきから黙って聞いていればぺちゃくちゃと弱音ばかり!王子としてではなく、王族としても品位を落とすその行動を即刻反省しなさい!このお馬鹿!」
バトラがそうジェシーを罵りながら部屋へ入って来た。
「お姉様もお姉様ですわ!こんなに甘やかして何になるというのです!ジェシーの周りは敵ばかり!姉の私達が守ってやらなくてはいけないのです!」
「バ、バトラ落ち着いて……!」
「そうですお姉様、少し感情が昂りすぎでは無いでしょうか」
「お黙り!どうせ私が割り込まなければ、王位はお姉様に〜なんてほざいていたでしょうに!」
「えぇ?そんな、まさか……」
「いいこと?これはあなたが生まれた時から決まっていた事なの!だからお姉様の婚約者候補に商家の長男であるカリムがいたのよ!二人に絞られてもね!」
バトラのその言葉にひどく驚かされた。
「バトラ、あなたジェシーが弟だって事に気付いていたの?」
私がそう尋ねると、得意げに鼻を鳴らしながら、
「確信はありませんでしたが、何となく分かっていましたわ。だっておかしいじゃない、お姉様のたった二人の婚約者候補が対照的な存在なんだから」
確かにそうだ。
カリムは商家の長男で、家業を継がなくてはならない。
一方でレオナ様は夕焼けの草原の第二王子で、兄である王に王子が生まれた事で王位を継承する可能性は極めて少ない。
私が女王になりレオナ様を配偶者とするか、アジーム家に降嫁するかはお父様にしか分からない事だったのだ。
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