if... 2013 〜広島V2記念作品〜 6

27 chiba side ページ27

千葉｢無理かも、今｣


意味を理解できずに首を傾げるAを抱きしめる。


千葉｢今ピーク。今までで1番ピーク｣


A｢……なに？なにが？｣


Aの涙に舌を這わせて、その唇まで辿った。


A｢口はだめ……｣


突っぱねる手に力はなかった。


トシにしてもらったから？


前みたいなやつじゃなくて、優しいキスを？


A｢チーちゃん……｣


限界だ。


愛しくて、欲しくて、今までここで築いた思い出を全て塗り替えてやりたい。


トシとの思い出だって……


A｢青ちゃんが……｣


その名前を聞くと、一瞬で冷静になれた。


A｢約束してくれたのに……。もう二度と離れないって言ってくれたんだよ……｣


胸にかけていた手を離そうとすると、Aがぎゅっとその腕にしがみつく。


A｢……チーちゃんはいつもそばにいてくれるね｣


千葉｢いつも見てるから｣


A｢青ちゃんもね、前はそうだったんだよ……｣


……辛い。


千葉｢……トシに……どこつけられたんだっけ？｣


しがみつく体をそっと離して、暗闇の中で背中のファスナーを下ろした。


目がなれて赤くなった箇所がわかると、ゆっくりとそこに歯を当てる。


A｢ん……｣


泣きたいのはこっちだ。


でも、泣かせるよりマシだ。


トシの気持ち、よく分かる。


A｢痛っ｣


千葉｢いつもより強ーくしときました｣


A｢いつもって……｣


千葉｢もう油断するなよ｣


ずっとこの中に閉じ込められたらいいのに。


A｢油断してなくても青ちゃんは金縛りの術使えるんだもん……｣


その言葉は虚しく響く。


キャンプでトシのどこが好きか聞いた時、Aは目だと答えた。


金縛りになったみたいに動けなくなるって。


今でもまだそうってことは、今もまだトシを……


A｢チーちゃん、ありがとう｣


胸の中でため息混じりに呟いたAを、更に強く抱いた。

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