夜空を見上げる鮫と月 part８ (ページ9)

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「アイシテル」ページ9

Aside

　「・・・・。」

そこでは、雨音にも似た水音が鳴り響いている。

先程とは違う温かい雨が私の頭から降り注ぎ、
体全体を温めて行く。

そんな温かな雨を浴びながら、私は思い出していた。

愛してる。

あいしてる。

アイシテル。

私に向けられたその単語。

あれは言葉では無い。

それは・・・単なる、音だ。

あれは意味を持たず、声が出した音に過ぎない。

昔に言われたその音は、私の記憶を呼び起こす。

　「・・・。」

記憶が・・・・霞んでいく。

ヴァリアーに来てからあった様々な出来事に、まるで靄が
かかっていくように。

私は思い出せなくなっていく・・・

しかし、

それと反対に鮮明に色づく記憶は昔の事。

当の昔に過ぎ去った過去の時間。

私に与えられた知識と、経験と、言葉・・・。

それらは全て、綺麗なものでは無い。

　「・・・・。」

ボスが私にあの言葉を告げた。

そんなハズ無い。

そんな事無い。

私は・・・

「・・・・・。」

私は長い時間、１人で、温かな雨を浴び続けた。