抑えられない ページ46
「・・・スクアーロが心配だったから・・・。」
ス「！」
Aはそう言うと俺を真っすぐに見つめ返した。
俺を・・・
心配して・・・来てくれたのか・・・？
Aの言葉に俺の心がざわつく。
「仕事も・・・あんなに貯めてるのに・・・私に黙って・・・。」
ス「う゛・・・。」
俺はAのその言葉に声を詰まらす。
どうやら、バレてしまったらしい・・・
今まで、Aと二人で片づけていた仕事。
それを１人で片付けるのは・・・少し無理があった。
徹夜しても全く減る事のない書類は、俺の部屋を
簡単に埋めて行った。
「・・・ごめんなさい・・・。」
すると、Aは俺に謝った。
Aの長い黒髪が小さく揺れる。
「私を・・・心配してくれていたんでしょう？」
ス「・・・あぁ・・・。」
俺は・・・Aの事が心配だった。
俺の勝手な感情をAに向けたが為に。
Aの過去のトラウマを呼び起こしてしまったのだ。
Aに俺の想いが、伝わらなくてもいい。
Aが苦しむ姿は見たく無かった。
ハズだが・・・
それでも、抑える事が出来ないこの強い思いは
俺の心から溢れて止まらなかった。
「ありがとう・・・私を・・・・愛してくれて。」
ス「っ！！」
Aは俺にそう言うと、俺を見つめて
小さく微笑んだ。
その表情は夕日に照らされて赤く染まり、
Aの耳元でピアスがキラリと光る。
ス「A・・・。」
「・・・・。」
そこまで言うと、俺はAの額にそっとキスをする。
そのキスは親が子をあやすような、優しいキスだ。
Aが俺を心配してくれている。
Aが自分の心を、感情を、意志を。
言葉で俺に伝えてくれる。
俺はそれが嬉しくて・・・
目の前のAが・・・
愛しくて・・・・愛しくて・・・・・
仕方がない。
ス「A・・・。」
「・・・・。」
俺はAの名前を呼んで、優しくAを
抱きしめる。
俺がAを抱きしめても。
俺が額にキスをしても。
Aは俺を拒絶する事は無かった。
オレンジ色の路地裏に二つの影が重なると、
静かに風が通り過ぎた。
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作者名：猫のこたつ | 作成日時：2019年7月30日 10時
