夜空を見上げる鮫と月 part８ (ページ41)

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一番やりたい事ページ41

ル「Aちゃんにも意志があるわ。好きな物や嫌いな物。考えたり、思う事はいろいろあるでしょう？それは人間だから・・・生きているからそう思うのよ。」

　「・・・。」

その間にも、私の頬を何か温かなものが伝っていく。

　ル「その感情を無理やり無かった事にして、物のように生きる事は自分で自分を苦しめている生き方なのよ・・・。」

　
　「・・・・。」

頬を伝うそれは、ぽたぽたと床へと零れ落ちる。

それは頬を伝って床に落ちる雫。

私が流す、小さな涙。

　ル「ボスは・・・Aちゃんの事を物だなんて思ってないわ。もちろん私達だってそうよ。」

　「・・・。」

そんな雫をルッスーリアは優しく指で拭う。

　ル「だから・・・自分のやりたいように生きていいの。ここに居る皆はAちゃんの事を道具とか、物だとか、そんな風には扱わないわ。」

そう言うとルッスーリアは私を優しく抱き寄せた。

「・・・。」

私は・・・

今まで自分の事を道具だとか、便利な物であると
思って生きて来た。

私に優しくしたり、心配してくれる人なんて
ほとんど居なかった。

私の意志は関係無く、言われた事をやらないと
生きて行けなかった。

でも・・・

ここの皆は私の事を大切に思ってくれて・・・

優しくしてくれる・・・

そしてボスは・・・・

こんな私に居場所を作ってくれた。

　ザ「お前がただの道具なら・・・・大人しくここに居ろ。」

私は先程のボスの言葉を思い出す。

もし、本当にボスが私を道具だと思っていないのなら。

私のやりたいように生きていい。

もし、本当にそんな風に生きてもいいのなら。

　「・・・・・。」

私は・・・・・・。

　ル「Aちゃん・・・今、あなたが一番やりたい事は何かしら？」

ルッスーリアは頭を優しく撫でながら、私に質問する。

　「・・・・・。」

私は自分で頬の雫を拭うと、ルッスーリアを見つめた。

私の・・・

やりたい事・・・。

書類で溢れた部屋の中。

心の奥で押さえていたその物の声に耳を澄ます。

そして、自分の意思を、想いを。

音にして、そっと、口から出せば。

ルッスーリが優しく微笑んだ。